第十三話

第十三話


お待たせして申し訳ありませんでした。
一年半以上のときを超えて、終わりの話を書きました。

何度も書き直しているうちに諦めましたw

つうわけで、神代系ひぐらし、ここに完なのです。


 

 乱戦、という言葉が現実となった光景だろう。

 

 泡を吹きつつも襲いかかる村人達。

 戦闘職の隊員ならまだしも、工作員に毛が生えた程度の隊員ではその奇襲に対応できるはずもなく、いくつもの打撃を受けて気を失う。

 戦線離脱した隊員には手を出さず、村人達は森の奥底に戻ってゆき次の奇襲の機会を探る。

 たまたま戦闘職が対応できたときは撃退できるが、テイザーすらきかない個体もいる状況が事態の悪化を招いていると言っていい。

 この期に及んでも鷹野は実包の使用を禁じていた。

 いまだ女王感染者の居所をつかんでいないため、どこに逃げられるかわからない状態で劇的な発症を招きたくないと言うのはわかるのだが、時間を追う事に鷹野自身がストレスによる八つ当たりを始めており、隊員の士気を地の底までおとしめていた。

 

 叫ぶ鷹野。

 不満を鬱積する隊員。

 ある意味、究極的な状況といえる。

 ブラック、まさにブラックであった。

 

「あー、ちょっといいっすか?」

「なによ小此木、何かあるの!?」

「すでに部隊損耗が3割をこえやした。一般的に言えば撤退、前線レベルでも一時引いて体勢を立て直す、そういう状況です」

 

 そう、確かに戦闘職ではない隊員の多くが刈られた。

 死亡や重傷ではないが、骨折や肉離れなどが発生している事実を考えると、いちど部隊把握して再編すべき状態といえる。

 状況は流動的だが、相手はゲリラ戦を仕掛けてきていた。

 ベトコンのような陰湿さはないが、己の耐久力に任せたかのような襲撃は小此木も辟易とさせられていた。

 旧軍がこの地域の人間を兵として重宝したという話を思い出させる何かがあった。

 

「・・・撤退、てったいですって!? 何も出来ずに消耗出血を強いられて撤退、撤退ぃ!? あんたたち本当に山犬なの? 不正規戦の専門家で乱戦中心の戦士集団だったかしら? 自衛隊の正規部隊を相手にしても正面攻撃以外なら必ず勝てるんだったわよね? で、相手は誰? 正規部隊? スペシャルタクスフォースかしら? ねぇ、相手は誰? 村人よぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 小此木の顔は一瞬ゆがんだが、それでも状況判断を曲げるわけにはいかない。

 自分の部隊がすり切れてゆくのを見続けるわけにはいかないのだ。

 

「雛見沢症候群発症者を甘く見過ぎていた。戦力を見誤った事実は受け入れやす。ですが・・・」

 

 ギン、と視線を強く光らせる。

 

「実弾の使用許可をいただけやせんかね?」

 

 高まり続けた血圧が一気に引いたかのように蒼白となった鷹野であったが、引き際を見極めていた。

 そして、深々とため息をはいた後、見た目は冷静に言葉を発する。

 

「一時引くことを許可するわ。でも、再侵攻は必須。女王感染者を早々に始末しなければ、この発症は雛見沢に収まらないわ。これは国家と人心に関わる窮地、それでも一抹の正義がなければならないわ。実弾の許可は一度再編した以降判断します」

 

 いまだ瞳の奥には狂気の炎が見とれる。

 小此木はいろいろと腹を括ることにした。

 

 

 

 ハンディー無線からモールス暗号がきた。

 未だ裏山落ちず、山犬一時撤退再編中、と。

 

「ケイちゃん、そろそろ私らも応援に行ったほうがよくない?」

「魅音、指揮官が腰を軽くしてどうする? 戦況は膠着、時間ばかりが浪費されてるって事実を考えれば、そろそろ痺れを切らすころだ」

「でも、それを待ってていいのかな、かな?」

「レナ、逆に考えてくれ。裏山組の全滅は計画のうちだ、と」

「そ、それは少し非道ではございませんこと?」

「無道な山犬には、未だ俺たちがあの奥にいると思わせなくちゃならないんだ、だから・・・」

 

 そこまで説明したところで、ハンディーに特殊な音が響いた。

 それは待ちに待っていた合図。

 視線を合わせた先にいる富竹さんにハンディーを渡すと、彼はみたこともないような真剣な顔つきで会話を始めた。

 そう、彼の所属する監査部門が本格的な行動を開始したのだ。

 人名や指示や、そして作戦内容に至ると、俺たちは耳をふさぐ。

 直接聞くと不味い話だからだ。

 サトコは聞きたそうにしていたが、それを詩音が許すはずもなく。

 お互いの耳をふさぐようにしている。

 自分の手がゆるめば、相手を殺すことになるかもしれない、その説明を聞いてサトコも手をゆるめることはない。

 

「(さてさて、予備召集を飛び越えて部隊招集がかけられた、か。ほんじゃ俺らもそろそろ動くかね?)」

 

 現在、正式な作戦行動中ではないはずの山犬で発砲があれば即時捕縛が行われる。

 すでに一度撤収が行われる山犬部隊は再編後に実包の装備変更が行われるだろう。

 ここで、彼らの集合地点に「誰か」が現れれば、ストレスで軽くなっている引き金にどれだけの指がかかることか。

 

 やばい、蜂の巣になる運命しか思いつかないわ。

 

 というわけで、「おしりフリフリ○んが○んが」作戦は却下だな。

 命冥加な話すぎるし。

 

 そうなると、集結しているあたりに村人を襲撃させる?

 あかん、流血騒ぎじゃすまんか。

 

 ・・・まずは村人の撤退が先だな。

 裏山に抜けてお堂に痕跡を残した上で・・・

 

「魅音、天気は?」

「・・・後二時間ぐらいで現地は曇り、つうかガス」

 

 目の前の机に広がっている雛見沢の地図にいろいろと書き込み始める。

 

「待ち伏せ部隊もすべて撤収、裏山経由で県境越え。途中お堂に痕跡を残して双子堂に籠もってる細工。何時間かかる?」

「直接撤収で一時間、双子堂の細工も含めると・・・三時間」

 

 地図を挟んで俺と魅音が交わす会話。

 

「富竹さん、双子堂の位置って知ってます?」

「ごめん、名前も初めてだよ」

 

 双子堂というのは、裏山にあるお堂そっくりのお堂がさらに奥の裏山にあるというもの。

 多分、裏山そっくりであるその奥の山を使った戦略的詐術のネタだろう。

 さすが雛見沢だ鬼ヶ淵だと賞賛を送りたくなる。

 

「近くまで舗装されている道がありますので、車で急行します。魅音、詩音、園崎に協力依頼。山間突破した村人の回収と俺たちの投入だ」

「わかったよ、ケイちゃん」

「・・・私は逆にスポッターとして狙撃地点に向かいましょうか?」

「法的根拠を基礎にした詐欺働きをしようっていうんだ。遵法作戦しかだめ」

「残念ですね。これでもUSAで修行済みなんですけど」

 

 まぁあれだ、まじで追いつめるとなれば考えるけど、今回はだめ。

 

「本当なら、正規部隊投入まで引きこもっていたいんだけど、わりとタイトなスケジュールだけに青年会のみなさんに被害が出る可能性がある。その辺を潰したいんだわ」

 

 了解、と準備が始まる。

 そうそう、この建物は物理的に閉鎖するぜぇ。

 な、サトコ。

 

「にぃにぃの安全は、(わたくし)が守りますわ!」

 

 

 

 

 作戦と言うにはおこがましいが、段取りが進むとまるで神の采配かのように進んでしまう。

 いま、俺たちの目の前に展開している悲劇は、そんな感想を感じさせるものであった。

 

「お、おれたちは、ただ雇われてただけで・・・」

「ふ、不正規部隊だなんて知らなくて・・・」

「こ、これ、なんかの冗談なんだろ? な!?」

 

 いわゆるごろつきレベルの人間が離反し、

 

「・・・はぁ、負けですなぁ」

「なんで、なんでこうなったのよ、なんでぇぇぇ!!」

 

 幹部クラスは諦観と錯乱。

 それを離れたところで見ていることになった俺たちは、実に後味の悪いことになった。

 

 元々は正規部隊、番犬の到着が遅れるものとして動いていたのだが、逆にはられた現実。

 そう、猛烈な勢いで早くきたのだ。

 これは大石さんたちの活躍により、表の政治が脅かされたことも影響している。

 あと、うちの両親や竜宮さんたちの活躍によってメディアが動こうとしたこともあるだろう。

 それを押さえる、その条件で部隊展開が高速化されたのだ。

 

 双子堂をつかった欺瞞活動が表面化する前に山犬部隊は押さえられ、そして事件は大まかにいって闇に葬られる流れとなった。

 

 もやっとするなぁ、と思わなくもないが。

 それでも誰かが危機になるぐらいならまだそっちの方がいいと思う。

 

 とりあえず、今回の騒動の発端となっている「東京」組織。

 研究や開発に熱心だった世代の次世代は私腹を肥やすことに熱心だったため、ブリリアントな勢いで横領罪が適用され、おもしろいぐらいに首が吹っ飛ぶ事態に。

 加えて、巻き添えだが今回の事件に大人として関わった人々の多くが降格や減給の処分を受けることとなったが、それなりの報奨金が出回って増減なしだそうだ。

 

 で。

 

 俺たちの雛見沢は・・・。

 

 

 

 

「ねーねーケイちゃん。なにしてるんですか?」

「黙っててくれ、詩音。現在逃亡中じゃ」

「逃亡中って、部活ですか?」

「部活だったら徹底抗戦してるわい」

 

 興乃宮の喫茶店で潜伏中のところ、なぜか詩音に見つかってしまった。

 

「ふーん、でもケイちゃんもそろそろ年貢の納め時だと思いますよ?」

「年貢ってのはな、上位の搾取者に納めるものであってだな」

「ふんふん、つまりぶっちぎる気満点、と?」

「アホ言うな」

 

 確かに俺は追われている。

 魅音、レナ、サトコ、梨花ちゃん、に。

 まぁサトコと梨花ちゃんは同居しているので、完全に逃げてるわけではないのだが。

 それでも、それでもだ。

 正直、色恋沙汰で迫られるのは困る。

 

 まぁ、魅音の成績が思った以上に「アレ」だったので、詰め込み受験対策を始めたのが切っ掛けだろうことは間違いない。

 図書館だの自習時間では足りなかったので、うちまで引っ張り込んだりしたところ、茜さんが大いに盛り上がり、婚約だの何だのと大暴走。

 さすがに魅音も否定したが、真っ赤になってデレデレだったのであまり意味がなかったわけだが。

 これを見ていてうちの妹たちであるサトコや梨花ちゃんも暴走を始め、そしてレナが走り始めた。

 

 鉈を片手に。

 

 こえーんだよ、おめーの鉈は!!

 

 実体験的な危機を覚えた俺は、雛見沢だけではなく興乃宮まで逃亡範囲を広げたのだが。

 なぜか鉈片手のレナは検挙されず「がんばれよー」とか声援を送られていやがるんだよぉ!?

 あれだろあれ、武器だろ凶器だろ抹消兵器だろぉ?

 おいおいおい、まさかまさか、ロリかわいいとか言う路線でお目こぼしされてる訳じゃないよなぁ?

 

 ああ、ああ、なんというか恐ろしい。

 

「とりあえず、圭ちゃんには私たちの仲人をしてもらわないといけないんですから、とっととくっついてくださいね?」

 

 にこやかな笑みの詩音の横には、もうひとりのにーにーが苦笑い。

 

「おいおい、親友。助けちゃくれないか?」

「あははは、僕も沙都子に橋渡しを頼まれてるからね。通報しないだけ味方してると思ってくれるかな?」

 

 くそぉ、ああいう雰囲気で恋愛とか、無いと思うのだよ、俺は。

 

「どう言うことなんです?」

「ほれ、魅音とレナは少女マンガ的な妄想丸出しで、沙都子は本気で王子ねらい。リカちゃんに至っては・・・」

 

「至っては、なんなんです?」

 

 不意に、気づいた。

 詩音、胸にサラシを巻いてる、と。

 ちぃ・・・。

 

 ダッシュで逃げようとした俺を悟史がカニばさみ。

 

「し、しんゆう?」

「あははは、そろそろ、本気で四つにくんでくれるかな? ほら、分校がものすごく空気悪くなって迷惑なんだ」

「・・・」

 

 見上げた先にいるのは、詩音、ではなく魅音。

 にっこりほほえむその瞳の向こうに狂気の色はない。

 しかし、心底怖いと感じる何かがあった。

 

「あー、魅音?」

「おっやぁ~? 三センチ差がある私は、詩音ですけどぉ?」

「いや、ウエストが・・・」

「ふん、ふんふんふんふんふんふん!!」

「ちょ、ちょっと魅音、魅音! 圭一が死んじゃうってば!!」

「暴かれれば死しかない、そんな情報が女にはあるという事を思い知らせるんだぁぁぁぁ!!!」

 

 というわけで、前原圭一、三途の川が近い生活をしています。

 

 リバーサイド前原、本日も営業中です。

 




いろいろと波乱の内容を書こうと思っていたんですが、全員が奇跡を起こさなくても追い立てられるような軌跡もあるよね、という感じになりました。
応援してくださった方、感謝です。

これで、新しいものに手を出せるというものですよ、ええ