第二十話

第二十話


ちょっと書けましたのでアップですw



 携帯電話をベットに放り投げた。
 それは、本来充電用のスペースに置かれるモノだったが、いとわしさの方が勝ってしまった。

 あの場から去った他の人間の去就がすべて出揃ったと言うところだろう。
 セシリア、シャルロット、ラウラ、鈴、全員の「国家代表候補」の立場は守られ、専用機の剥奪も避けられた。
 いや、避けられたと言うよりも「その立場」に縫い止められた、と言っていい。
 今後、どのような活躍があっても「国家代表」にはなりえない、そういう結論が各政府の結論らしい。
 人格や品格、そんな定量的ではない尺度による地位鑑定が行われることに反対の声は多いが、彼女らの扱いに関するものではないことは明らかであった。

 この世界で希少な男子IS適合者の精神的な危機を招いた。

 この事実は恐ろしいほどに広がり、国際社会における各国の立場を危ういモノにしてしまった。
 私自身に対する評価は、さすがに表に聞こえるものではないが、それでも最悪一歩手前であることは自覚している。

 風間氏に言われるまで全く理解していなかった。
 いや、私たちは一夏を理解しようとしていなかった事実を「理解」させられた。
 あの一夏が、私たちの過度な攻撃でPTSDを発症しているだなんて。
 全く気づきもしなかったのだ。

 確かに、私たちの想いはあった。
 しかしそれは伝えられていなかった想い。
 言葉にすらしていない、そんな想い。
 これを察しろとか、どれだけの要求なのか。
 そんな要求を向けるほど一夏は私たちに好意的だったのかと、自照してみたが、なんら答えもない。

 セシリアとラウラは、国家代表候補の辞任を申し出たそうだが、それは許されないそうだ。
 今回の件をもとにして、地位の剥奪やISの剥奪がないように、とすでに姉さんからネゴが入ってしまっているから。
 辞任なら、と言い募るセシリアに、政府は冷たく言い放ったそうだ。

「これ以上の面倒事を起こすな」

 つまり、辞任すら誤解による面倒が発生しうる、と政府は判断したという。
 だから、ISも剥奪しない。
 およそもったいなさ過ぎる飼い殺しが決定した。

 基本、専用機を持っている人間は厳しい法規の実行が求められる。
 100%守っている状態であれば、監獄にいるものと同じだと言っていい。
 ならばIS自体を起点にした監視を実施した方が正しい対応だと言うことで関係各国の足並みが揃ったと言っていい。

「篠ノ之さん、ちょっといいかな?」
「夜竹か、うん、なんだ?」

 同室の夜竹は、今回の騒動の細かいところはさておいて、大凡の概要を理解していた。
 正直、一夏に対する態度では、早々に注意しようと思っていたそうだが、やはり校内で専用機を顕在化するような人間に直接話をすることなど出来るはずもなく、と半ばあきらめていたそうだ。

 それはそうだ、と今なら理解できる。
 ISが展開できない空間で向けられた無数の銃器。
 あれが一夏の、そして夜竹たちの恐怖なのだ。

「・・・いままで済まなかった。全く配慮に欠ける行為ばかりで夜竹たちにも非常に迷惑をかけたことをわびる」

 深々と頭を下げると、彼女は微妙に歪んだ苦笑を浮かべていた。

「済んだことだから、って言いたいところだけど、やっぱりその辺は皆にゆっくり理解してもらうほか無いと思うわよ?」

 そうだな、と私も苦笑い。
 失い尽くした信用を、これからじっくりと積み増さなければならないのだ。
 時間がかかること間違いなしの苦労であるが、やるほか無いことでもある。
 あの姉ですら人に関わっていきることを選んだのだから。

「・・・ところで、篠ノ之さん」
「なんだ?」
「あの、和製ジェームスボンドと織斑先生が結婚ってほんと?」
「噂では、織斑先生が熱心にアプローチしてるらしいぞ」
「「「「「へぇぇぇ」」」」」

 部屋のドアの隙間から、無数の目がこっちを見ており、隠れていた自分を忘れて関心の声が挙がった。
 まぁ、女人養いがたし、といったところか。

 

 

 アルヌスに新しい居住区が出来た。

 簡単に言うと、同性婚同姓出産希望者エリア、である。
 国内での治験が難しいと判断した日本政府が、事実上の飛び地であるアルヌスに追っつけた形であるが、アルヌスの多様な人材は「あり」と判断した。
 もともと、こっちの世界での同性による「関係」は結構頻繁に存在している。
 宗教的な縛りもないし、戦争での同性関係は非常に当たり前に存在していたから。
 その行為はもちろん「発散」であったが、「出産」に至る可能性があるのならば、とこっちでも希望者がいるぐらいであった。
 まぁ、参加希望者ばかりではなく「見学」希望者も多数のに上ったわけだが。

 この治験参加者の適正だが、実は出産確率の高いカップルと低いカップルが混在している。
 実績作りで成功例だけ並べるつもりだった政府に待ったをかけたのは「束博士」。

「本当のところの実験しないと、いみないでしょ?」


 まさにその通りだっただけに受け入れられた。 
 そんなわけで、ほぼ100%の出産が約束されているカップルと1%を切る確率のカップルが存在しているのだが、それでも希望にあふれていると言っていい。
 なにしろ、いままで生物的な確率で言えば「0」だったのが、「ゼロ」でなくなったのだから。
 確率が足りないなら積み増せばいい。
 精度が足りないなら絞り込めばいい。
 そこに至る道は険しくても、確実に、絶対に、至ることが出来うる道があるのだから。

「・・・というわけで、一夏君は十分気をつけて。近づかないように」
「なんで俺が決め打ちなんですか!?」

 あー、聞く? 聞いてみる? つうか聞いたようね?
 そーかそーか、千冬さんからは一夏君が知りたくなったら教えてあげて欲しいと言われてたから、教えてあげよう。

「あー、急に興味がなくなりました、じゃ・・・」
「デリラ、確保!」
「ごめん、イチカ、オーナーには逆らえないんだよぉ」
「くそぉ、フーさん、かんげんしてくれぇぇぇ!」
「はっはっは、好奇心猫をも殺すというのだよぉ」

 まぁ、簡単に言えば、イチカ君、同性出産で生ます方も生む方も適性が高すぎるのだ。
 本気でやれば、120%出産確定の人なのです。

「・・・ききたく、なか、った」

 崩れ落ちた一夏君を抱きしめつつ、デリラが目で問うが、結果は変わらない。

「まじです」
「がぁぁぁぁぁぁ!!!」

 というわけで、同性婚地域には絶対に近寄らないように。

「かみよぉぉぉぉぉ!」
『あら、何か用かしら?』
『うむ、何か用かのぉ?』

 主神とハーちゃんが俺経由で語りかけているが、まぁ聞こえてねーし。
 つうか、うん、君ら責任とれない問題だから。
 およそ「亜神:天災(うさぎ)」案件ですし。
 もちろん、一夏君の相方であるバニーではない方向ですが。

 ともあれ、地球の各国から集まったレインボーカラーなマイノリティーなはずの集団でしたが、いつの間にか世界の壁を越えた共通趣向に耽溺する微妙集団に立場を変えて、日々日々子孫繁栄のために活動を開始したのです。

 実はこの集団に、主神も裸足で逃げ出す方々が参加していた。
 そう、ハイオークである。
 彼女たちの基本は、他種族からの精液による刺激を受けるか人工子宮による繁殖であったわけだが、同性出産技術という今まで考えたこともない角度の衝撃はハイオーク全体を揺るがすほどのもので。
 実際に出産までの実験を体験して、次に界が最接近する時までに情報蓄積をという話になっているとか。 俺付きのハイオークも物凄く興奮してたモノなぁ。

 全くの問題がないわけではない同性出産技術。
 同性しかいないハイオーク。
 喉から手がでるほど身につけたい技術に違いない。

 というわけで、新居住区のシステム管理は、ハイオークに丸投げすることにした。
 種族的な常識から微妙に狂気した方々と、世界的な方向性からパージされた狂気なかたがた。
 絶対に話が合うだろうと言うことで。

 

 

 まぁ、派手に人員が動いたのだから、それなりに外部に情報は伝わってしまう。
 その情報を元にした騒動というのは当然起きるわけで。
 まず、外信が騒ぎ始めた。

「とうとう同性出産の治験開始か」と。

 それに遅れるというか置いて行かれた国内メディア、というか週刊紙記者が銀座に走る。
 で、その週刊紙記事を元にテレビ局が走る。

 なんとも間抜けな構造であった。
 ただ、国内メディア浄化が進んだおかげか、某国寄りの狂った色合いが減ったのが改善点ではあったが。

「・・・ありっすかねぇ?」
「まぁ、段階許可するしかねーだろ」

 お呼ばれした太郎閣下との朝食。
 最近、表沙汰レベルで付き添っているハイオークはさておいて、本日はロゥリィが同行している。
 新素材による戦闘用ゴスロリを某所に発注しているそうで、その受け取りにつき合わされることになっている。
 それ以上に、それ以上に。
 織斑一夏、特地DEお見合い大作戦の取材以降付き従っている「N○K」スタッフも同行しているのが何とも。
 生では流していないが、先日の専用機持ち会見や「同性出産希望者抽出」の会議なども独占取材している。
 これに関して思うところはないわけではないが、正直に言うと政府系の操縦を受け付けるのがNH○だけなので選択肢がないとも言う。
 ただ、全く情報がないと憶測だけで進む可能性があるので、段階的に概要的な情報を少しずつ流すという方向性で進む打ち合わせが納豆汁をすすりつつ行われるという日本の原風景と政治の融合というか何というか。
 スタッフも鼻血モノの光景だと興奮していた。

「そうなのか?」
「まるで、朝ドラの光景で政治が語られています。これは視聴者の神経直撃の光景かと」

 なるほどねぇ、と太郎閣下とスタッフの話を聞いていた俺であったが、ロゥリィは全く興味なしで朝食を楽しんでいる。
 特地全体で言えば、アルヌスの食生活自体が異次元的であるが、日本国内でいうと二段ぐらい方向性が違う。
 やはり「料理」というよりも「商品」としての特性が強い。
 だからローカルな進化を遂げる家庭料理という方向性が伸び伸びと成長している日本食をロゥリィは好んでおり、日本側にくるとレストランより洋食堂や和食堂を好む。

「で、風太郎。実際のところ、どんな感じなんだ?」
「出産確率の高いカップルは既に妊娠準備完了ですね。低いカップルもアプローチ中で、手応えを感じてるそうです」
「・・・ぶっちゃけよぉ、論理的な話はさておいて、手応えって何なんだ?」
「本人たちの話では、まぁ、宗教的な話になりますが、行為の途中に魂が降りてくるのを感じるそうですよ?」
「えらく宗教に突っ走った話だな」

 本気で、そんな感じ。
 それも神様が存在する特地で。
 加えて言うと、実存する神様が「ああ、あるある」とあるある話で追承認してるし。
 で、魂を感じたカップルの8割が妊娠準備を完了してるし。
 本気で神様の関わる世界で神秘を越えた科学を実存させた狂気の天災さま。
 これがあの世界だったら世界追放レベルである。

「そういうわけで、これから職分が広がりますので、がんばってください」
「・・・あー、関係閣僚ひろうかなぁ」
「何なら総理大臣とか」
「あんなサンドバック、誰がやりたいかよっ」
「えー、政治家ならトップを目指すものじゃぁ?」
「きょうび、政治家の花道は総理大臣じゃねーぞ」
「いやいやいや、野党とか自称第二政党とか総理大臣やりたそうですけど?」
「・・・はっ、与党離れしすぎてて実像を忘れてんだよ、あいつらは」

 ぐちが山盛りであったが、簡単に言えば、

「妄想を拗らせて、政治的厨荷病を煩っている、と」
「それだ、それを今後使わせてもらうぞ」
「いや、使ったらまずいでしょ、太郎閣下」
「絶対に流行らせる」

 ぐぐっと拳を握った太郎閣下はさておいて。
 はやるぞ、まじで。
 俺はそう思った。
 つうか、カメラを回している○HKが「使って良いですか?」とカンペ出したし。
 太郎閣下は、満面の笑みで「○」を出しているのが何とも。

 ちょっと未来の話、政治的厨荷病という表現は差別用語だと野党からヘイト発言だという国会発言があり、その議会は爆笑の渦で包まれた。
 やはり流行ってしまったのでした。

 

 それはそれとして。

 


 本日、戦闘用黒ゴスなんてどこに発注したのやらと思っていたら、結構意外なところでした。
 なんと、東レ・・・ではなく、石川○播磨重工でした。
 なんで重工?と思ったが、わりと魔法的事情と現代科学と冶金学が渾然一体となった感じの理由があったり。
 細かく説明されてもわからないのだが、このフィードバックで軽くて丈夫で長持ちの鋼材が生まれるという。
 もちろん、某国への技術供与は無しという絶対条件が契約にはいっているあたり、俺の某国嫌いがロゥリィにまで浸透したかもしれず。

「いやぁ、和製ジェームスボンドは伊達ではありませんなぁ」
「いやぁ、俺関わってませんよ、開発に」
「いえいえいえいえ、あなたが特地で人の輪を広げてくれたからこそのこの開発。それに間違いないのですよ!」

 とまぁ、こんな感じで大歓迎。
 この開発にはレレイも関わっているということで、今度はレレイ導師もご一緒に、という話の流れに。

 ロゥリィは完成したゴスロリの耐久試験を行うと言うことで、いち早く特地に戻ってゆき。
 俺は内々に行われた新鋼材完成式典に出席と相成ったのでした。
 まぁあれだ、今後もよいおつきあいを、ということだろう。

「とはいえ、この魔力への反応というのは、面白い現象ですなぁ」
「近似現象で言えば、ISコアのシールドエネルギーとISのシールドとかでしょうねぇ」

 実はあのISコア、疑似精霊石で精霊力だったりする。
 これを魔力に置き換えたISが出来た時点で、いろいろと弾みがつき、そしてSD、ソニンックダイバーが魔力運用で生み出されたわけだ。
 さすがに魔力の正常な認識が出来ていないので、イチから制作は出来ていないのだが、それでも魔力というモノへの実存アプローチが出来ている。
 これは再現性を根拠とする科学のアプローチが可能な存在であることを示したことでもある。
 その足がかりが特地であり、そしてその関係者となるのは開発企業にとって当然の流れとなっているそうだ。

「今後も、よろしくお願いいたします」
「出来る限り穏便なおつきあいが出来ることを祈っています」

 と、こんな握手の現場にもN○K取材班が同行してるのは、ちょっと俺を追いすぎではないでしょうか?

 




やっぱり、神代作品のいっくんは不幸がないと輝かないよねぇw