第十九話

第十九話


年度末が何とか切りついたので、ちょっと続きを書きました。
無用に原作キャラをたたけばいいと思っていやがる、なんていったらいやんw



 今まで、どれだけ下を見て生活していたかが分かる。
 突き抜けるほど青い空。
 まぶしい陽光ですら瞳にとどめていたいと感じさせられた。

「くあぁぁぁ、いい空気ですね、風間さん!!」
「おう、空気も水も飯も美味いぞ」

 にかっと笑う風間さんの周囲に居た女性達は、次々に空を舞う。
 ISではない、SD、ソニックダイバーを身にまとって。

「あ、あ、あの、風間さんっ」
「一夏君も楽しんでくるといい」
「・・・はい!!」

 訓練でも授業でも模擬戦でもない空。
 束さんが「無限の成層圏」と名づけた意味が理解できる。
 空に境はない。
 空に区切りはない。
 どこまでも広がる空。

 ああ、そうか、今気づいた。
 俺は、空に居るばかりじゃない。
 宇宙に、宇宙の突端に居るんだ、と。

「風間さん、とくち、さいこーーーーーーーー!!!!」
「あははははは」

 その日、日が暮れるまで俺は空を舞った。
 美術性も神秘もない。
 だけど楽しかった。
 だけど嬉しかった。
 ああ、俺は今、満たされている。

 

 

 おかしい、なんでだろう?
 IS学園でも隣に裸体のラウラが居たことがあるが、今回は斜め上だ。
 歓迎会をしてもらって大騒ぎして、未成年だけどおいしいビールをのんで、千冬姉に弟と杯を酌み交わすのが夢だったといわれて。
 うん、超盛り上がってしまって。

 で、なぜか完全裸体のバニーガールに添い寝されてる。

 あ、いやいや、ウォーリアバニーって種族だった。
 うん、あけすけではすっぱだけど純情で。
 可愛い感じだけど気安くて。
 うん、確かに話してて楽だった。
 そんな彼女、そう、デリラが俺の隣に寝てる、
 なんか、こう、顔中にキスマークがあるんですけど。

 やばい、と背筋が凍ったが、起き上がった彼女、デリラがゲラゲラ笑った。

「ごめんごめん、酔っ払ったイチカを客間に持ってくつもりがお持ちかいりしちゃった」

 曰く、キス癖があるそうで、なんというか、うん、助かった。
 あと、同じぐらいの気持ちで残念に思った。
 うん、そう思った。

 そのことを風間さんに相談すると、

「あー、一夏君は姉っぽい感じの人に惹かれる方向性かね?」
「え、いやいやいやいや、うん、からっとしててジメジメしてなくて、しゃべってて楽しくて負担が無くて・・・あれ?」

 思わず、そう、思わず首を捻る。
 ここ数年感じていた鬱屈を、全く感じない相手なのだ。
 そういう意味では新鮮すぎる感覚であった。
 あれが、そう、今日の相手が、たとえば箒なら、物凄い勢いで木刀で切り込んでくると確信できる。
 もしくはISを展開だろうか?

「おいおいおい、まてまてまて。IS展開? なにそれ?」

 顔を青くした風間さんが言うには、IS学園内で私的なIS展開なんてしたら軍事裁判レベルの大騒ぎだと。

「あーでも、専用機持ちなので・・・」
「だったら尚更だ」

 眉をひそめた風間さんが、手元のスマフォで現行のIS関連法規を見せてくれた。
 確かに白式を手に入れたときに読んだ内容だったことは覚えている。
 でも、まわりで気軽にISを展開していたので、学園内が超法規的空間だと勘違いしていた。

「良くも悪くもヴルンヒルデ効果か、ちぃ、ちょっとまって」

 そういいながら電話した先は、三つ。
 一つは千冬姉。
 割りと真剣に事実確認をしていた。
 気配で千冬姉が謝ってるのを感じる。
 もう一件は石動議員。
 事実関係がどこまで伝わっているかの確認と、その行動の抑制。
 最後は、IS学園学園長、だそうだ。
 正面から切り込んで事実把握しているかについての確認。
 そしてこのままでは貴重なIS適合者が死ぬことになると強く抗議をしてくれた。

「PTSDを患っていないのは、IS学園の対応の上手さではなく織斑一夏本人の力によるものと理解してください」

 PTSD、と聞いて、色々と思い当たるところがあった。
 最初、箒と同室になった後、木刀で滅多打ちにされた日の夜、箒と視線を合わせるのが怖かった。
 セシリアと模擬戦の後、なぜか教室で銃口を向けられて本気で逃げたくなった。
 鈴と口げんかの後、ISを展開されて気絶しそうになった。
 ・・・ああ、よく俺は死ななかったなぁ。
 ラウラにもシャルにも、結構武器を向けられてるし。
 もしかして俺は嫌われているんじゃなかろうか。
 いろいろと好意的な交流が出来ている気がしてたけど。

「だぁ、結構ダメージきてんじゃんか!」

 そういいながら風間さんは俺を担いで走り始めたのだった。

 

 


 やべー、現地民お見合いとか言ってる場合じゃなかった。
 自衛隊アルヌス駐屯地の病院で見てもらったのだが、痛覚や恐怖に関する感覚が微妙に麻痺していて、わりとまずい状態だったことが発覚した。
 フルメタルで、ジャケットな感じだった模様。
 もちろん、このデータは外に流すものではないが、千冬さんには正面から流した。
 その話を聞いて彼女は泣き崩れたそうだが、弟の命が消し飛ぶ寸前なんて事態を見過ごしていたのだから色々と考えるべきだろう。
 それはさておき、本人告知をするべきかという話になった段階で、保護者は制止したが俺は話すことを提案した。
 自覚症状あってPTSDを感じたのだ。
 ならば、一歩深いところに踏み込むべきだろうということで。

「・・・ああ、やっぱり」

 彼も睡眠不足を感じていたそうだ。
 平均5時間ほどしかねられていないというのだから、かなりまずいだろう。
 基本的に精神的なバランスが崩れると、さまざまな形で不具合が出る。

「でも、不眠ってほどじゃないんですけど」
「人間な、連続で6時間以上睡眠をとっていないと、不眠と同様の精神的圧力を感じるようになるんだよ」

 その辺の学説には興味があったので、先日タブレット端末に入れておいたのを見せる。

「すんません、風間さん、読めません」
「ん? IS学園ってバイリンガル必須だろ?」
「周りが日本語で付き合ってくれているんで、あははは」
「よっし、特地研修語学編開始だわ」

 ということで、特地の言葉と世界各国の言葉のヒアリング力を上げるために、しばらく特地で療養をさせることにした俺であった。

 

 


 抗議の声が束さん経由で俺に届いた。
 織斑一夏に恋する女子が怒りの声を上げているそうだ。

 はっきりと言おう、俺のほうが怒ってる、と。

 彼女らの名前を聞いただけで表情におびえが出たり体が震えたり。
 まじでPTSDだぞ。

 そんなわけで、特地自衛隊の協力の下、アルヌス会見をすることにした。

 会場はマーキュリー神殿。
 すでに出来上がっている部分だけで会見をすることにした。


 相手側の女性達は大いに怒りを燃やしていた。
 聞くに堪えない罵詈雑言を吐く凰国家代表候補。
 ねちねちとどうでもいいようなことを言い募るオルコット国家代表候補。
 笑顔で罵倒をするデュノア国家代表候補。
 臨戦状態でISを起動しようとし続けるボーデビッヒ国家代表候補。
 そして、日本刀のこいくちを切る寸前の篠ノ之箒。
 まぁ、なんだ、外交とか交流とか交渉とか、一切理解していない小娘達の目の前で診断書を見せてやった。
 いわゆる、PTSDの詳細症状についてである。

「「「「「!!!」」」」」

 其れに加えて、無許可のIS展開をIS学園内で行っていた事実に関するIS学園内のログも添付。
 一夏君の白式が起動していないのに、付近に居る女子の、専用機持ちのISが展開し、攻撃行動をしている事実。
 一夏君のISが無理やり精神的なバイアスをかけて正気を保たせていることが、ISのログから伺える。

「日本政府は、君達の出身国に対して正式な抗議をしている。貴重なIS男子を度重なる無許可IS展開で命の危険に晒している、と」

 ここから始まる言い訳アワーの中身は聞き流せる内容だ。
 乙女心が解っていないとか、自分達の気持ちを寸借しないとか、そういう内容だ。

「だまれ」

 その俺の言葉と共に、光学迷彩していた伊丹さんの部隊が現れた。
 銃機関銃を向けられ、即座にISを纏おうとした女性達だがその姿に変化は無い。
 束さん特設のIS非展開フィールドの中だからな。

「ISの守りも無く銃器に晒されるということは、これほどの恐怖なのだ。それが理解できない貴様らではないはずだ」

 滝のような汗を流す自称乙女達。

「織斑一夏はな、日常から何時射殺されるかもしれないという恐怖と共にあったのだ」

 びくり、と少女達は震えた。

「それも、クラスメイトや幼馴染から死の恐怖を覚えるほどに」

 滝のような涙を流す少女が居た。
 がっくりとうなだれてひざを付く少女が居た。

「篠ノ之箒。羞恥心や嫉妬で何度一夏君を殺そうとした? 木刀だけで3度は殺人未遂を犯してるぞ」
「・・・!」

 この会見に現れた少女達に、次々と問題点を指摘してみた。
 誰も反論は無い様子である。

「自分が告白できない意気地の無さと嫉妬せいで殺されては、日本政府どころか唯一の家族である織斑千冬さんにも申し訳ないと思わんのか!?」

 がっくりとうなだれた少女達。
 そう、すでに仮面は崩れ落ちた。
 残ったのは織斑一夏を「すき」と思っていた少女の残骸。

「織斑一夏君自身の依頼と政府からの依頼で、現在、彼は特地療養をしている。この行動に関して君達が干渉できると思うか?」

 全員が静かに首を横に振った。
 その程度には頭が冷えたのだろう。

「これで君達が一度日本に戻れば、間違いなく一夏君が洗脳されているとか君達が騙されているという話をする人間が居るだろう」

 そんな人間の言葉を聞く前に、と俺は一夏君がこの特地に来てからの行動や表情を撮影している動画を見せた。
 朗らかに笑う姿、にこやかな会話。
 それは最近のIS学園では全く見られないものであったが、少女達にはどこかで見たことのある何かであった。
 いや、自分達が心引かれたはずの少年の、素顔であった。

「彼への謝罪はするな。顔を合わせただけで彼の心が壊れる。ただ、二度と日常で彼の命を脅かすようなマネをしないでくれ。其れだけが数少ない君達が今出来ることだ」

 

 

 マーキュリー神殿を出た後、ゲートを越えた彼女達は各国代表候補はそのまま各国の大使館へ連れて行かれたそうだ。
 篠ノ之箒だけはIS学園へ戻れたのだが、じっと自分の部屋で考え事をしていたとか。

 だってなぁ、人切り包丁を持ち込んで叩ききるとか考えていたJKだぜ?
 色々と考えてもらわないとなぁと。
 つうか、あれだろ? 腕ずくで一夏君回収とか考えていたらしいぜ、あの小娘達。
 脳みそ筋肉過ぎだろ?
 思わずその辺を聞いてみたいと思って千冬さんに連絡したら、ただただ申し訳ないと謝られてしまった。
 なんとも悲しい話だ。

 逆に一夏君の症状は加速的に良好な方向へ進んでいた。
 やはりおねぇさんっぽいデリラが積極的に介護しているのが利いているのだろうと思う。
 わりと性的な視線を感じるようになったと嬉しそうにヨニヨニしているデリラがなんとも。

 人間関係の悪化で精神が凍り付いていたことが知れる。
 自己防衛反応でもない限り、世に聞く織斑一夏の鈍感さは理解できないし。

 特地ではモテモテな状況を嬉しそうだが恥ずかしいみたいな感じを面に出しつつ、夜に酒場で「男として責任が重いんですけど、性的に暴走しそうで、どうしたらいいんすか風間さん!!」とか相談に来るほどのバランス感覚がある。
 個人的には食い捨てでも相手は喜ぶだろうけど、色悪小僧にジョグレス進化したら千冬さんに殺されそうなので真面目に相談に乗っているわけだが、伝え聞く本業のお姉さん達に評判が悪い。
 彼女達の言い分としては、恋愛はピュアに、肉欲は機械的に処理すべきだということらしい。
 いってる事は解る。
 でも、それを主張する際に「色欲」に塗れた視線で一夏君をみている方々が多いわけで。
 初物食いに賭ける情熱を見た気がする。
 そういう意味ではデリラにそっちも面倒をみてもらったほうが安全なんだよなぁ。
 うん、彼女、自衛隊で性病検査を受けて二重丸もらってるし。
 その他感染症も全くなし。
 まさに絶対完全安全という優良性。
 かの千冬さん一押しなのも理解できる。

 どこと無く千冬さんとノリが似てるしなぁ、デリラ。

 

 

 一般生活的に問題がなくなってきたので、ちょっと傭兵的活動で精神強度をあげさせることにした。
 いわゆるイタリカ=アルヌス交易便の護衛というお仕事をやって見せようというのだ。
 このアクションは大きな問題がある。
 定期的に盗賊が襲っているからこそ定期便の護衛だし、この仕事での対応は捕縛ではなく撃退だからだ。
 逃げればいい、しかし凡そは殺すことになる。
 このとを一夏君に話すと、一度震えた後で苦笑い。

「やりますよ、俺」

 そういいながら隣に居たデリラの腰を抱く。

「守りたいもの、出来ましたから」
「・・・イチカ」

 肉体関係は無いらしいのだが、わりとマジカップル化してる気がする。
 うん、いい感じ。

 

 結果としては、行きで二回、帰りで一回の襲撃があったそうだ。
 で、その襲撃の一回目で一夏君は「脱童貞」を果たし。
 二回目でどうにか撃退したところでイタリカ到着。
 行きの脱童貞の後でデリラが励まそうかと動く前に一緒に護衛していた傭兵達が一夏君の肩を抱いて飲み屋に連れて行って一晩中飲み明かしあせたそうだ。
 技量はあるが「はじめて」ならそういうものだと皆が語り、そしていい傭兵になれと励ましたとか。
 自分の初めてを語る傭兵達と共感した一夏君は、帰り道の襲撃で中規模の盗賊団を壊滅させた。
 勿論周辺傭兵と共にだが、それでも成し遂げた何かを心に刻み込んだ。
 それは殺人への禁忌ではない。
 それを超えても守るべきものへの愛が刻まれたのだと俺は思う。
 だから、仕事から帰ってきた一夏君は、デリラを抱きしめて、そして結ばれた。


 デレデレになったデリラが目の前でそれを語り、嬉しそうにテュカとロゥリィが聞き出している。
 ヤオも興味深げに身を乗り出しており、レレイなどはメモ帳に書き込んでいる。

「一夏も男になったか」

 感慨深げな千冬さんも聞いているのがどうも。
 つうか、人間的に「チェーリー」じゃなくなって、男性的にも卒業とか、わりと別人進化してるわな。

「チフユも負けてられないね」
「ああ、テュカ、その通りだ」

 そういいながら俺の腕に体を寄せるのは、なんというか。
 うん、おっぱい気持ちいいです。
 だから、ごりごりと無い胸を押しつけないでください、亜神様。




まぁ、あれだけ好き勝手に攻撃していれば、相手も壊れますw