第十七話

第十七話


 ごとごとと荷馬車の間を車で移動。
 時々テュカがリュート片手に歌い、日本側で耳コピした曲をつま弾いてみたり。
 大雨に攻められたので森に逃げたり隠れたり。
 毎日○ーソンに戻って炎竜親子と交流したり。

「ふーちゃん、束さん以上に自由だねぇ」
「え、そうですか?」

 かの世紀の大天災様も驚くほどの自由生活だとか。

「つうか、束さんも結構自由ですよね?」
「束さんの場合は、自由、を装ってる感じかなぁ」

 本人が語るには、逃亡中であっても裏表関わりなしで接触が多く、本当に世界から姿をくらませていられたのは、ほんの一瞬だったという。
 加えて言えば、世界から姿をくらませるという事は、あらゆる意味で存在しないようにすると言うこと。
 それは、接触不可という「負荷」であり。
 それは、理不尽なまでに「孤独」であるという。

 当初はそれを「自由」と感じていたそうだが、今思えば「狂気」の一端だっただろうとか。

「確かに、昔の束さんが今の束さんを見たら狂ったと思うかもしれないけど、今の束さんからすれば、昔の束さんは狂ってたんだよねぇ」

 ぽりぽりと頬を指でかく束さん。
 その表情には世間で言われる「天災」の面影はなく。
 ちょっとコミュ障の気配が残っている大人の顔であった。

「そういう意味だと、ちーちゃんは孤高に追いつめられたさみしんぼうかなぁ」

 目を閉じて、思い返すように語る束さんにテュカが答えた。

「あ、それわかる。チフユって、結構甘えん坊よね」
「お、そうそう、わかるぅ?」
「うんうん、だって、酒場で飲みつぶれた後、寄宿舎のベットに引き込まれたんだけど、ものすごくゴロゴロしてて可愛かったのよぉ~」
「え、まじ? その映像ない?」
「ごめーん、そういう機械ってまだ慣れなくて」
「くそぉぉぉ、アルヌスの機材更新を見てろぉ」

 ガジガジと親指の爪をかむ束さんに狂気の陰はない。
 自分の大好きな人のすべてがほしい、そんな我が儘な子供のような衝動が見えるだけだ。

「つうか、テュカでも使えるような簡単な録画装置を作った方が早いんじゃないんですか?」
「ふーちゃんないす!!」

 ひょいっと古鍵で○ーソン空間に飛び込んだ束さんは、数分で戻ってきた。

「じゃーんじゃじゃーーーーん! 精霊式録画装置『撮れるんです』かんせいでーす!!!」

 見た目が汚れているところを見ると、○ーソンでに三週間過ごしてるな、うん。
 まぁ、テュカもレレイも面白そうだからいいけど。
 ところでロゥリィは何で離れてるんだ?

「・・・フゥ~、あのタバネの手元からいやな空気が感じられるのよぉ~」

 本気でおびえてるロゥリィって珍しいな、と思っているところで思い出した。
 これって地下(ハーディ)案件だ、と。

「まさか、束さん。その素材って・・・」
「はーちゃんのかけらぁ~」
「ひぃぃぃぃっ!」

 いろいろと契約をして手出しされなくなっても苦手意識は拭えないようであった。
 はーちゃんことハーディと束さんは結構いろいろと周波数があったらしい。
 やっぱれだ、白無垢ドレスを着る相手が同性というあたりに共感が生まれているのだと思う。

 方や異世界の神、方や異世界の天災(あらがみ)
 やっぱ気が合うに決まってるわ。

 

 そんな気軽な逃亡旅をしている俺のところに、太郎閣下からの通信が入った。
 いろいろと政情も整ったので、いちど国会に顔を出してくれないか、というもの。
 実際、帰るのは一発だ。
 ○ーソン経由で銀座ローソンにいけばいいだけだし。
 陛下への手みやげの植物標本や淡水一般生物の標本なんかもわりと集まったし。

「ね、ねね、フー。ヘイカって、薬草とか興味あるかな?」
「一般的な薬草はありだけど、エルフの秘薬はなしな」
「えー、ぜったいに研究してくれると思うわ?」
「いやいや、周囲の欲の皮が突っ張ったバカ野郎どもが先導して帝国国土侵攻とかなったら面倒だし」
「・・・あー、ニホンにもそういう人居るんだ」
「そういう人が多いぞ」

 まぁ、せい寿の主体を握っている人間が別物なので大きく動かないが、我欲と他国がスクラムを組むと面倒この上もない。

「フー、もちろん、わたしたちもぉ一緒よねぇ?」
「あーはいはい」

 新作のデザインが入ったってお店からメールがきたのよぉ、とうれしそうなロゥリィ。

「めーるって、どこでそんな話が?」
「アルちゃん経由よぉ」

 うちの○ーソン店員の有効範囲が非常に広いと感じさせられたのでした。 

 まぁ、それはそれとして。

 国会かぁ、と首を傾げる。
 前回は大パニックになった上で某野党が崩壊寸前になったものなぁ。
 で、他の野党と合流して名前を変えて。
 つまり過去の失敗をごまかして、というわけだ。
 しかしその過去の失敗の契機となった俺を忘れるわけがない。
 だから代表質問とか国会招致とか面倒なのはごめんですよ、と一報入れたところ・・・

「一応な、議員による質問会というのをやりたいって言ってるんだわ」 
「今度つるし上げとか計画していたら、こっちもマジですけど」
「それは完全に排除した」
「『それは』っすか」
「あー、ばれると思うからいっとくがな。女権団の石動議員が音頭をとってる」
「・・・それ、別の意味で真っ黒じゃないっすか」
「あー、そう思うよな?」

 とはいえ太郎閣下曰く、俺はいかなければならない理由があるという。

「なんすか、それ」
「おまえさんの特地逃亡は『現地調査』ってたてまえがアルだろ」

 あ、それか。
 つまり、

「政府臨時職員としての立場っすか」
「ああ、あと帝国から時期宰相として迎えたいとか言う話も聞きてーしな」

 ピニャ殿下かゾルザル殿下か?
 どっちにしても困るよなぁ。

 そんな風に思っていると、向こうからの要望は結構現実的なものであったそうだ。
 いわゆる国交の延長で政治的な窓口としての人員を求めておると言うこと。
 将来的には宰相として動いてもらいたいそうだ。

「まぁ、ピニャ殿下が婿にきてくれれば言うことがないとか言ってるそうだがな」
「「「「「・・・!」」」」」

 背後の殺気が怖いんですけど。