第十一話

第十一話


どもども、神代でっす。
お楽しみいただければ幸いです。


 

 AMFに覆われていない空間への進入が始まったとプレシアさんの話。
 地球の地上からの光学観測で判るので、明らかに地球をなめているというかなんというか。
 現在は木星軌道上のアステロイドベルトに身を隠しているんだけど、周辺鉱物と輻射反応が全く違うので人工物であることがバレバレ。
 というわけで、我ら部活の天体観測の結果として、アステロイドベルトの中に宇宙人の宇宙船発見と国内SNSにアップしてやった。
 元々は隕石や彗星や準惑星などの組成を光学観測で絞ろうという企画だったのだが、あり得ない情報が混入したのでどこの人工衛星を拾ったのかという騒ぎになったのだが、どうも違うことが判明。
 人工衛星・探査衛星・軍事衛星などの情報まで集めて、間違いなくアステロイドベルトを把握しているものと判断。
 そして観測した輻射反応から、天体ではなく建造物であると考え、そして直結した。

「やべ、宇宙人じゃね?」「把握」

 とまぁ、こんな事情をアップしたら反響が物凄い勢いできた。
 JAXAやNASAからも正しい判断であるというメールとHP上の発表を受けたし、各国の天文学者もそれを裏付ける精密情報が更新され始めた。
 中には、自分たちが初めて見つけたのだから命名権は自分たちにあると叫ぶ某国もあったが、いつものことと「寝言は寝て言え」と反撃された上で無視されたという。

 

 この地球上で人工物をアステロイドベルトで発見、というニュースは、実は管理世界も揺るがした。
 魔法が発達していない世界で、こじつけにも近い自然現象観察だけで遠距離探査ができているという事実に「科学恐るべし」みたいな空気が出来始めているそうだ。

 流したのはプレシアさん。

 で、管理局では派遣担当者の引責問題になっているそうで。
 ほれ、魔法のない蛮族に見つけられてしまった無能は誰だ、ということ。
 もちろん、攻撃されたとか貴重な次元艦が沈んだという騒ぎではないのだが、それでも見下していた相手からの一撃ともいえる発見報告、それも現地学生グループというあり得ない発見者たちを考えれば、どれだけ手抜きをしていたのかという意見になるのは正しい流れであっただろう。

 

 科学的な組成研究のために天文観測をしていたという我が部の特異さは周辺学校にも影響を与えたそうで、近くの学校の生徒会長様が見学に訪れたほど。

「はじめまして、@@高校生徒会長、琴塚文江です」
「初めまして、風間風太郎デス」

 なんとなく、お堅い空気を感じて片言になってしまった。
 スタイルとか結構なお手前なのだが、引っ詰め髪と黒縁めがねがぶちこわし。
 まぁ髪型とかメガネとかは高校生らしいと思うんだけど。
 前もって気配を感じていたのか、マッド部員たちは全身猫かぶり中。
 いい反応なんだが、彼女の配下の生徒会委員たちの質問に、異常に早い反応で答えているのはいただけない。
 会話の少ないボッチオタクが判る分野の話題を振られてハッスルしているみたいじゃないか、やだぁ。

「・・・こ、個性的な、活動ですのね?」
「まぁ、科学と名の付く分野なら、物凄く広範囲でやってますんで」

 というわけで、公開実験の一部として、昼間に見える北極星実験をした。
 単純に、光学的フィルタを多面的に展開して、北極星以外の星からの光を科学的に遮るというもの。
 天体望遠鏡からスマフォを通してプロジェクタに映し出される画面が徐々に暗くなってゆき、最後に増幅された画面に映し出された北極星が輝いた瞬間、物凄い歓声が響きわたった。
 そこに星があるという証明のために、何度か傾斜を付けて想定される他の星や星のない空間などを観測してさらに関心を呼び、驚きにあふれる公開実験となったわけだが。

「・・・ウチの天文部もこのぐらい活動してくれれば」
「いやいや、生徒会長さん。無茶ぶりですよ」
「でも・・・」

 とりあえず、天文部というものが基本的に科学の世界ではないことを説明。

「え? 星を見るのよね?」
「星を見て、語る部なんです」

 科学部は、サイエンスだけど、もしくはサイエンスフィクションをサイエンスに引っ張り込む世界。
 でも、天文部は違う。
 天文学部ならまだしも、天文部は「地上」から見える星をみて語り合う部なんだ。

「?」

 どうやら格好だけではなく頭の中身も堅いようだ。

「自然観察や天候観察、四季折々の出来事。これを5ー7ー5で纏めれば俳句、5ー7ー5ー7ー7なら短歌なんて言われます。いわば文学ですよね?」
「最小の文学なんて言う人もいるわね」
「その感じたことや思ったことを完成のままに文章にすれば小説なんかの方向性です」
「認めましょう」
「感受性をそのままに、宇宙に魅せられ宇宙に意識を向けた人々が高校生レベルの『天文部』でしょう」

 何か思うところがあったのかもしれない。
 苦笑いで俺の意見を肯定してくれた琴塚生徒会長。

「つまり、天文部なんてものを高校生でやっているのは「天文文芸部」か「天文学部」だけってことかしら?」
「高校生レベルなら天文文芸部が普通ですね」
「・・・そう、じゃぁウチの高校の天文部は「天文民芸部」ね」

 なんだろう、この自虐的な視線に答えちゃいけない気がする。
 しかし、そこから微妙な話が始まった。
 琴塚会長の幼なじみが率いる天文地学部は、基本的に地学部の延長で天文をやっていて、装備は地学寄りなのだそうだ。
 しかし、幼なじみは「星馬鹿」なのだそうで、地学部分を塗りつぶして天文部分で再起動させたのだが、裸眼観察レベルしかできていないため活動実績が積めていないという。
 このままでは予算削減対象になるのだが、そうなると活動実績はさらに積めなくなってしまう。
 そこで、地学部分と天文部分の融合を見事にやってのけたウチの部を視察して、どうにか建て直しのヒントでも、と思って視察に訪れたのだという。

「優しいですね」
「・・・天文部に活動実績なんて言う話は無茶ぶりだって判ってるわ。でも、なにかしらの実績を残してくれれば、そうすれば・・・」
「民芸に定量目標を押しつけるのは酷ですねぇ」
「わかってますっ!」

 きっとにらまれた俺は、にへらっとわらう。

「風間部長、もしかしてなにかアイデアが?」
「同じ押しつけるなら、定量目標の対象を提供すべきでしょう」
「普通の『天体観測楽しかった』感想文なんて意味ないわよ?」
「それは、彼らが一番魅せたい天文部の楽しいところです。でもそれって最小単位の内輪受けネタなんでよ。だからこちらからネタを絞らせればいいんです」
「もしかして、どこかの部の会報に寄稿文を乗せさせる、とか?」
「いいですねぇ、琴塚会長の判ってるじゃないですか」

 しばらく肩を落とした彼女だが、ありがとう、と小さく呟いて去っていった。
 まぁ、幼なじみ同士仲良くしてください。
 ところで、君たち生徒会役員は帰らないでいいの?

「もうちょっと、もうちょっと、ここの不思議科学を体験させてください!!」
「「「「「させてください!!」」」」」

 その5分後、待てど暮らせどやってこない役員たちを探しにきた生徒会長様の雷が落ちたのでした。

 

 

 

 現在世界中で、アステロイドベルトに現れた人工建築物についての話題が盛り上がっている。
 どんな宇宙人か、人型かそれ以外か、SFかファンタジーか。
 ファーストコンタクトの権利は我が国にある、と何の権利もない主張を繰り返す某国はさておいて。
 やはりファーストコンタクトを行うためには、大気圏外の大空間建設が必要じゃないかとか言う話もでている。
 国境のない世界が必要です、と言う訳らしい。
 宇宙開発へ意識が向けられ、誰もが宇宙へのあこがれを感じ始めた背後で、世界は大きく揺れていた。
 だって、異星人が侵略者じゃない可能性を否定する材料が全くないのだから。
 というか裏では盛んに「侵略者」であることをアピールする勢力が多い。
 主に軍事企業なのだが、軍備開発業者からインフラ関連、そしてPMCに至るまでが活発なので、実際に違っても戦争にしたがることは間違いない。
 少なくとも、侵略者と仮定している勢力としていない勢力同士の抗争でも構わないのだから罪深いといえる。
 もちろん、探査衛星ですら「ん十年」かかる到達距離なので、どうやっても手が届く範囲の話ではない。
 だが、目の前に、目の見える範囲で「それ」が発見されてしまったのだ。
 考えるほかない。
 なにも買っていない宝くじというわけではない。
 手に入れてしまえば、あとは当選するかしないかはダイスの神様だけが知っているといえる。

 

 

 あらゆる創作作品で異星人コミュニケーションを円滑に進めていることに定評のある日本だが、実のところ今回の接触など求めていなかった。
 ハッキリ言えば、異星人なんて隣国人並に面倒この上もない話だと思っているわけで。
 たとえ個人的に仲良くなろうとも、入国管理法を盾にする気満々であった。
 が、世界はというと、某国をのぞき日本という国の活躍を期待していた。
 宗教的にも人種的にも包容力のある日本人、と盲信している面があり、有り体に言えば「日本よろしく」みたいな空気があるという。
 あまりに押しつけがましいので、ファーストコンタクトをさせるんだったら報酬よこせとUN大使が切れたとか。
 どんな報酬か?
 実はもうある程度下話が終わっていた。
 そう、敵国条項の撤廃であった。
 二次対戦が終わって何年もたっている。
 正直、UN分担金比率が高すぎるので脱退も視野ににれざるを得ない。
 残ってくれと言うのなら、せめて敵国条項の看板をはずせ、と。
 これに関して、猛烈な議論を呼んだそうだが、国連議席の89%の賛成と常任理事国全員の賛成を持って撤廃準備が始まることになった。
 某隣国は烈火のように反対を訴え続けていたが、賛同国は2国ほど。
 賛同表明後、撤廃するのでODAよろしくという国ばかりだったらしい。

 なんというか、うん、すてきな世界だと感じた俺でした。

 こんな裏話をなぜ知っているかというと、じつはBS_NHKスペシャルで放映していたのだ。
 マジ困ってるから国民のみなさんも協力してね、ということらしい。

「フーちゃん、この宇宙人って」
「ミッドの先行偵察次元艦だねぇ」
「・・・えーっと、どうにかしちゃう?」
「いまのところ、AMFの範囲を月軌道まで広げてるから、こっちに近づいただけで警報の嵐だろうねぇ」

 我が家でカウチポテト状態の俺となのは。
 昴と銀河がおもてなしと小躍りしながら昼食を作っている。
 なのはも手伝うと言っていたのだが、まぁ、お察しの通り。
 それはさておき、ベランダからフェイトとアリシアが現れた。
 一応認識阻害結界を張っているそうだが、そういう方向から現れるのは感心しないと説教をかましたが、どこ吹く風。
 いや、フェイトはごめんなさいと頭を下げたが、アリシアは鼻歌気分である。
 ちょっとシメンとあかん。
 ・・・親に一報入れてからだが。

「あー、またなのはが抜け駆けしてるぅ!」
「アリシアちゃん、これは昴と銀河からのご招待なの」
「そういうときは誘ってよぉ!」

 ポムポムと軽い絡み合いの二人であるが、実はフェイトがうらやましそうに見ているのが切ない。
 気づいて、気づいてあげて二人とも。

「もー、フェイトもいってあげなさいよ!」
「!! ・・・なのは、フーは皆のもの」

 おいおい、なにを言ってやがるんですかフェイトちゃんさん!?
 いかん、俺も動揺してマッスル。

「共有物って何事?」
「「「!!!」」」

 なぜかしまったという顔の三人が、だらだらと汗をかき始めやがりましたよ?
 ちょっと踏み込んでやるか。

「はーい、ごはんできたよーーーー」
「はいはい、てーぶるふいてねー」
「「「はーーーーい」」」

 くそ、幼児会話モードにはいりやがった。
 これは攻め切れねぇパターンだな。

 がっくりあきらめた後、お食事中にこんな話題になった。

「ねー、フーちゃん」
「なんじゃい?」
「ミッドと戦争になったら、皆が困らないかな?」
「そりゃ、ミッドのみんなは困るかな」

 そう、ミンドチルダ関係の管理世界は大いに困る。
 しかし、管理外世界である地球には全く関係がない。

「関係ないなら、どうでもいいの?」

 ちょっと困った、そんな顔でフェイトちゃんの発言。

「どっちかというと、喧嘩売られて戦争を仕掛けてきた敵、なんだよ、ミッドチルダって」
「それって管理局が敵、なんだよね?」
「厳密に言えば、管理局の海、かな?」

 アリシアの問いに俺が答えると、昴や銀河も含めた少女たちが悩み始めた。

「えーっと、なにが聞きたいんだ?」
「「「「「世界平和の実現」」」」」
「そりゃまた高尚なお話で」

 思わず感心した俺にちょっと怒ってる銀河。

「あのね、フー兄ちゃん。自分の出身世界とお友達の世界が戦争状態になってるのを心痛めない子なんていないんだよ?」
「戦争を仕掛けてくるのを専守防衛してるだけなんですよ?」

 そう、現在、地球に統一された政府はないけど地域住民の一人として庭先に策をたてる程度の労力は仕方ないのです。

「必要なのは、向こうが間違いを認めること。で、政府じゃない組織なんだから、首のすげ替え時期でそれは可能。だから向こうの責任問題が一番のトップに行くまでは交渉なんてできません」
「「「「「・・・はぁ」」」」」

 猛烈なため息の五人でした。
 つうか、そんなため息をつかれるような事してないぞ?

「正直に言うとね、お母さんも結構引いてるよ?」
「あのプレシアさんが?」
「そ」

 アリシアの話を聞いて驚いた。
 少なくともミッド側への情報戦略は彼女によるところが大きいから。

「ふつうなら、流した情報なんて精査されてクラックされて消え去るはずなのに、一文字も欠けることなく流れ着いてミッドチルダどころか管理世界が大騒ぎだって。最近情報を流すのも怖いってお酒を飲みながら呟いてたし」

 まじぃ、プレシアさんが病み始めてる。
 こりゃ、ちょっとテコ入れが必要だわ。
 つうか丸投げしすぎでした。

「えー、プレシアさんには誠心誠意お詫びをしておきます」
「お願いだよ、フーちゃん。また病み目で大暴れとかイヤだからね?」
「はい」

 思わず頭を下げるほか無い案件でした。

 

 

 秘蔵のハイドアーフ酒樽を持ち込んだところ、なんとリンディさんのケアが行われているところでした。
 超助かりましたと頭を下げたところ、ぽこんと叩かれた。

「反省してるみたいだから言わないけど、気をつけてあげるのよ?」
「はい、反省してます」
「・・・ところで、このおいしいお酒ってどこで売ってるの?」
「自分の自家製なので、今度お持ちします」
「あらあらあら、催促したみたいで申し訳ないわね」

 といいつつ、にっこにこで。
 まぁ、彫金酒で歓心が買えるならOKだわ。

 

 

 翌週、日本政府のお役人という方々が俺の家にやってきた。
 昴と銀河は高町家に避難させたのだが、なぜか士郎さんが同席してくれた。
 曰く、政府関係には顔が利く、とのこと。

 今で対面した瞬間、政府の役人という方々が顔をしかめた。
 士郎さんをみて、である。
 つまり、マジで顔が通っているという事だろう。

「で、公安の方々が、一介の高校生相手に何の恫喝ですか?」
「・・・公安っすか」
「そうだ、この蛇みたいな目つきの中年は公安の人でね。随分と仕事の邪魔をされたものだよ」
「えーっと、士郎さんの仕事と言いますと・・・」
「ガードマンを一時期しててね」
「そっちですか」
「そっちって、ほかに何の仕事をしていると思ってたんだい?」
「職業インデアナジョ○ンズ」
「「「「「・・・ぶっ」」」」」

 瞬間、空気が変わった。

「いやぁ、高町さん、おもしろいお子さんをお持ちですなぁ」
「いやいや、実子ならおもしろかったんですがね。一応、うちの娘婿予定です」
「おいおい、おっさん、なに妄想かましてやがるんだ」
「おや、うちの娘に何か不満があるのかい?」
「方や蒼き流星魔のポズナー、方や現行犯罪確定のロリやろがぁ!!!」

 おもわず、半ば本気でやり合い始めた士郎さんと俺を、蛇目さんは呆然と見ているのでした。

 

 とりあえず、仕切り直して用件を聞いたところ、

「例の宇宙人基地の話なんですが・・・」

 一度取り下げてほしい、という話であった。

「なんすか、半島からミサイル撃ち込むとでも脅されましたか?」
「そっちは平常運転だから気にしてないんだがね」

 肩を竦めた蛇目さんは声を潜めた。
 なんと米国から「マジスギで国内兵器産業が暴走してるから、何とか沈静化したいねん。協力してくれへんかぁ」と泣きつかれたそうだ。

「え、そういうのって、まるっきり嘘だって決めつけて日本に非難決議するのが米国方式じゃなかったんですか?」
「それをやると、どっかの半島国が小躍りして騒ぎ出すから、絶対にいやだそうだ」

 あー、想像できます、と頭を抱えてしまった。

「取り下げるのは簡単ですけど、否定記載はしませんよ? 近日中に更新とかHP改造中につき、みたいな感じになりますけど」
「復旧のタイミングを合わせてくれるならそれで構わない」

 というわけで、今回の本題はそこだったそうだ。
 では、副題は?

「あー、実は娘が『蝶仮面』のファンでねぇ」
「あー、俗っぽいですねぇ、公安なのに」
「娘がお風呂で背中を流してくれるほど必死だったのだ。これに応えない親はない!!」
「わかります」

 そういいながら、蛇目さんと士郎さんが握手。
 なんだろう、この置いて行かれてる感は。




つうわけで、りりかるでした。