第九話

第九話


突っ込んどころ多数の捏造更新! ついてこられるか、みたいな!



 科学担当教師、スカさん。
 実は結構評判が良い。

 分かりやすい説明と、科学離れしている生徒の救済は綿密で執拗で。
 少なくとも、受験科目教師から「生徒の学習時間を奪うな」と猛抗議を受けるほど学習実績が向上している。
 まぁ理数系といわれる科学のお友達である「数学」系からは歓迎されているのだが。

 科学と数学、これは実存と虚構の表裏一体であり、互いに己を繋ぎあう鎖を掛け合う関係といえる。
 見える現実の理に当てはめる科学という学問。
 既にパズルといえるほどの非実用性を秘めつつも現実の影を描く出す数学。
 この関係が頭の中で繋がると、その思考方向が一気に理数系に偏る。
 勿論、国文系の立場のあるし蔑ろにされる内容ではない。
 だが、最近起きた文系学閥関係の指導方針疑義は大きな波として全国に波及しており、生徒の意識が文系から離れつつあったのも一つの要因だろう。

 ただし、授業中に何かを思いついて暴走したり、不気味笑いをするところが評価を下げたりあげたりしている。

 まぁ、総合的に悪くない。
 悪くないんだけど・・・

「・・・というわけで、風間君。私とともに科学の深淵をのぞき込まないかな? いやいや、君には日々特等席をだねぇ」
「おことわりデス」
「今ならかわいい彼女もつけちゃう」
「いやいや、商品かのようにおっしゃいますけどね、それまずいですから!」
「彼女といってもうちの娘だから、かわいいこと請け合いでねぇ」
「だから、自分の娘を押しつけようと・・・」
「まさか、うちの娘に不満があると?」
「不満もなにも、出会ってもいない人間関係ですよ!!」
「そうですか、うん、恋愛思考は大切ですからねぇ。いいでしょう、娘とデートでも・・・」
「おっさん俺の話をきけってば」

 こんな会話を二日にいっぺんほど押しつけなければいい先生だと俺も証言していい。
 なにしろスカさんの娘さんは全員「ろり」。
 どの子を選んでもロリって、もう、俺になにを目指させようとしているんだか。

「そりゃ、婿養子ねらいだろ」
「そうね、婿養子ねらいね」
「目の付け所がシャープすぎる!」

 キョウヤと忍のダブルパンチにめげず、どうにか気力を取り直したが、現状を考えると目眩を覚えないでもない。

 

 魔法で密着警護を売りにしていたプレシア警備も、AMFの使用で微妙になったかと思いきや、地球に漂流してしまったミッド人員を雇い入れることで解消した。
 わりと泥縄的展開だが、上手くいくのだからありがたい。
 つうか、管理局に元在籍という人間のほとんどが逃亡系なので、定職に就けるのがありがたいという話の方が多い。
 そういう意味で言えば、プレシアさんの警備会社の事務職なんてあこがれの職業らしい。
 定時上がりの残業無し、福利厚生満点という超ホワイト企業ぶりに、就職希望者が後を絶たない。

 まぁ、あのスカさんと面が通っているのには驚いたけど。
 なんと、あのフェイトさんの制作協力者でした。

「かわいい妹をありがとうございました!!」

 おもわずアリシアがスライディング土下座で感謝したほど。
 それを見たスカさんも顔をひきつらせていた。

「あー、彼女は死亡していたと思うのだが、新しいクローンかね?」
「え? ああ、細胞単位で生きていたんで蘇生させました」
「すーーーーばーーーーーらーーーーーーしーーーーーいーーーーーーー!!!!」

 そこから始まる科学万歳宣言によって、なぜか科学研究部が設立されて、そこの部長を任されていた俺でした。

 あれぇ? 
 ・3・?

 


 新部活、科学技術研究部は割とまともな部活でした。
 化学的実験で初期論文が書けるようにデータを集めさせたり実験結果を記録させたり、そして公に見せられる書式を身につけさせたり。
 これにはずいぶんと高い評価が外部から集まった。
 いわゆる技術系学部を持つ学校から。

 受験のテクニックの問題になるのだが、現在、技術系学部に入学した学生なのに、技術系や理系の試験無しで入学できてしまう問題が表面化しているそうだ。
 電池のプラスとマイナスの意味が分からないのに技術系入学とかあり得ない、という叫びの中、我が校の科学技術研究部は、初歩的な理系技術を書面化して理解させているということで、非常に好評。
 というか、理解書面を分けて欲しいという話になっている。
 非理系技術学部学生に教本として使いたいとか。

 というか、書面の面で高校生の制作物を参考にするとかおかしくないですかね?
 そう思ったのだが、向こうとしてはいろいろと理由があるらしいのだが、面倒な話があった。
 そう、現在の国文派閥戦争の火付け役が書いているからと言うイヤな話。

「うんうん。風間君は才能あるテロリストですねぇ」
「恐怖は振りまいてねーデス」

 とはいえ

「このアナログシンセサイザー演奏会って、絶対科学じゃねーデス」
「なにを言ってるんだね、これほどの科学、滅多にないのだよ」

 スカさんの間口が広すぎて部員一同困ってますが、それでも楽しいことを引っ張り出して部員たちを右往左往させる姿が校内でも好評です。

 

 

 スカさん、いろいろと話を聞いてみると、なんと、次元世界を股に掛けた犯罪者だったそうです。
 犯罪、あれだろうか?

「婚約詐欺」
「まちたまえ、何の話だね?」
「美人を紹介すると言い寄って持参金をだまし取って、会わせてくれたら幼女です、みたいな」

 部員の中には「ご褒美です」と叫び出すアホもいるが、まぁそれはそれ。
 スカさんの科学的アプローチが異次元すぎるので、絶対に地球人じゃない、宇宙人だ、いや異次元人だと校内でも噂されているので部員向けの告白は全くスルーされていた。

「あのだね、この世界ではしらないが、違法にクローンを作ったり違法に生体強化をしたり、人体の機械化とか、その辺が違法でね」
「クローンは医学の範囲で、生体強化は化学、人体の機械化は生体機械工学(サイバネティック)。万能科学的天才じゃないですか」
「・・・あー、風間君」
「なんですか?」
「この世界にも倫理というモノがあるはず何だがね?」
「ええ、自分のやられてイヤなことは相手に施さない、程度の常識はありますよ」

 ぐっと考えるスカさん。

「もしかすると、だね」
「ええ」
「私が罪に問われている罪状、この世界では罪では、ない?」
「勝手に他人を誘拐して改造したら、そりゃ罪ですけど。お互いの了解があれば、わりとグレーゾーンです」

 ふをぉぉぉぉぉぉぉ、と激しく動揺したスカさんは、女子が見たら惚れるほどに真剣な目で俺を見た。

「ドリルに、興味はないかね?」
「ドリルを相手に付けていいのは、ドリルをつける覚悟のあるモノだけだ」

 俺としてはかなりのつばぜり合いをしていたと思うのだが、その背後でうちの部員たちによる顧問&部長のドリル化計画が黒板に描かれていて背筋を寒くするのであった。

 

 ドリラーになることに対しては抵抗感がないが、両手がドリルでは研究と仕事に差し障るということで完全改造は断念されたのだが、どあほうがこんなことを言い出した。

「部長、アタッチメントです!!」
「てめーの股間をドリルにしてやろうかぁ!」

 ・・・わりと、ありだな。
 うん、とスカさんと視線を合わせて、股間ドリルの開発に関する原案を纏め始めたところで女子部員からのハリセンが入り正気に戻れた。
 あぶねぇ、やっぱドリルはやばい。
 同じ意味で「ドリル槍」は見せられんな。

「しかし風間君。アタッチメントはありだろう。個人の資質に合わせたアタッチメント、実にありではないかな?」

 たぶん、いろいろと夢想してるんだろうことはしれる。
 スカさん家の娘さんたちは生体機械サイボーグ化が済んでいるので、融合体と言える。
 その部分機能をアタッチメントで再現してみたいなーと言う「欲望」がモリモリ沸いているに違いない。

「そういう意味ではドリルを機軸にした武装をだねぇ」
「先生、ドリル剣とか」
「いいですね、一番実現に近いでしょう」
「ドリル盾とか、いけませんか!」
「いいですねぇ、いいですねぇ」
「ドリル槍、やっぱり槍ですよ!!」
「はっはっは、すばらしい!」

 そんなか、阿呆が気づきやがった。

「先生、風間先輩が『槍』で目を逸らしました」
「ちょ、おま、言いがかりはよせ!!」
「はっはっは、さすが筆頭助手、すでに形にしていましたか!!!」
「「「「「風間先輩のちょっといいとこみてみたい!!!」」」」」

 まぁ、なんつうか、隠し切れませんでした。
 ちーとアイテムボックス経由のそれを、鞄から引っ張り出してみせると、おおおお、とどよめく部室。

「その凶悪な槍が出てきたのが学生鞄であることについての疑問が山盛りなんですけど」
「はっはっは、部員諸君。そんな些細なことを気にしていては大人の階段は上れないぞ」

 意味深な俺の台詞に真っ赤になる男女部員。

「さて風間君。この槍の動力は?」
「気、ですね」

 そういって、魔力をドリル槍に流すと、物凄い勢いでぎゅんぎゅんし始めた。

「おお、おおおおおおお、すばらしいじゃないか風間君!!」
「すごいっす、せんぱいすごいっす!!」
「こ、これが槍の力・・・てんげんとっぱっすねぇ!!」

 なんつうか、スカさんの闇の力が部員全体に伝播してるなぁ。
 電波経由だろうか?

「つまり、このドリルが、後輩Aの股間に生えると」
「「「「「おおおおおおおお!!!」」」」」
「や、やめてください・・・」
「はっはっは、エミュークラブ的な謙遜だと理解しているぞ」
「いやぁぁぁぁ、やめろぉぉぉぉ、ジョ○カーぶっとばすぞぉぉぉ」

 思いの外に余裕だったので、本気で改造しそうになった俺とスカさんでした。

 

 

 正式名称はさておいて、校内では狂気科学(マッド)部として有名になってしまいました。
 やはりあれだろうか、蛍光灯が切れているというので用務員さんに内緒で交換した機能蛍光灯やら不調の便所に設置した高機能便座やらが「好評」なおかげに違いない。
 蛍光灯はナシ○ナルや日○やらからオファーがあったし、便座はイナ○クスやト○から共同開発の申し入れがあったもの。

「ちがうちがう、そこを勘違いするな風間」

 恭也曰く、視点が違う、とのこと。
 つうか、それ以外はふつうの部活だぞ。

「風太郎って、本当にだめな奴よね」
「忍の罵倒がワンパターンな件について」
「失敬ね、バカとか阿呆とか、そういう形容詞が成績上使えないから苦慮してるのよ!!」

 こんな強気な月村女史だが、恭也と二人っきりになるとデロデロになるんだよなぁ。

「ちょ、ちょっと、見てきたような嘘は止めてちょうだい!!」
「・・・みていたら、いいと?」
「・・・冗談よ、冗談。風太郎も冗談よね?」
「・・・」

 既に恭也の両手が俺の首を絞めているのでしゃべれませんがな。

 まぁのぞこうと思えばのぞける。
 この校内にある限り、だが。

 密かに学校運営側と協力して、ウチの部がセキュリティーカメラをそこら中に設置したのは有名な話。
 蛍光灯や黒板、机やイスにも設置されているのだが、実はこれを発見できた人間は部員以外いなかったりする。
 公開である生徒が机とイスを分解して見せて、ほんとはそんなものはない、嘘に違いない、と動画投稿サイトに映像投稿したのだが、その五分後に分解されている机とイスの角度からしか撮影し得ない分解中動画がアップされ狂気が一気に広まってしまった。
 外の評判では、そういうネタ映像なんだろうと言うことになっていたが、我が部やスカさんを直接知っている生徒たちは、マジでやりやがったと感じたとか。

 まぁ、単純な科学じゃない。
 どっちかというと魔法。
 それもミッドとかベルカとかじゃない、俺の魔法。
 彫金魔法だったりする。

 便利だわ、と苦笑いの俺であったが、部員とスカさんは彫金魔法の基本という形で纏めた書物に首っ丈。
 現在、彫金魔法を電子回路と見立てた開発が急ピッチに進んでおり、日々日々ツヤツヤしてゆく部員たちは既に常識の折から飛び出た狂気(マッド)なのだろうこと、間違いなし。
 そして彫金魔法を新機軸の魔法へ進化させつつあるスカさんは、そう、なんというか・・・

「天才と言うよりも天災?」
「はっはっは!」

 誇らしいのか胸を張るスカさん。
 うん、がんばれ、うん。

 

 

 俺の学校生活が異常暴走しつつある背後では、八神さんちのはやてちゃんが順調に回復しているそうだ。
 下半身の麻痺は必要以上にロストロギアが魔力を吸い上げていたからだそうで、それがなくなれば徐々に回復する道理だ、とのこと。
 その辺は「天災」スカさんの見立てなので信用している。

「現状、はやて君からの魔力供給がない状態で放置されているあの闇の書だが、どうするかね?」

 魔法の偉い人という話で紹介されたスカさんを、はやてちゃんは「先生」と呼び慕っていたりする。
 見る人が見れば狂気に走る光景だと、プレシアさんの話。

「どうって、えーっとどうできるんですか?」
「そうだねぇ・・・」

 スカさんのプランは次の通り。
 1.完全解体
 2.部分分解
 3.完全改造
 4.魔改造

「四番がおすすめ・・・」

 言い切らせる前に俺が頭をはって恭也が意識を奪った。
 内容を説明しなければ彼女の判断が出来ないからだ。

「まず、君の魔力を奪っていた存在について説明しよう」

 そういいながら、準備していたプレゼンデーターを見せ始めた。
 こういう資料作りは、部員の得意技である。

「現在、あの魔導書はロストロギアという扱いを受けている」

 他人の魔力を集めに集めて挙げ句の果てに自爆するという説明をしたら、八神さんちのヴォルケンズが怒りの声を上げる。
 うそだ、でたらめだ、と。
 まぁ、そういうよな、ふつう。
 そこで、今までの主の顔を思い浮かべろとか、どういう扱いだったかとか、目的は何だとかたっていたか、とか聞いてみると、だいたいは集まったところまでで記憶がとぎれていた。
 物凄く不安そうな顔だったが、今の主について聞いてみると、それはそれは嬉しそうに語り始める。
 では、出会いから良好な関係だったかと言えばそうではなく。
 当初は今までの主のような扱いを受けるものだとびくびくしていたそうだが、

「みんなはウチの子供や!」

 と生活の面倒を見ると言い出したはやてと始まるドキドキ主従ライフで。
 まぁ、ハッキリと言いきれば幸せな毎日だったそうだ。
 では、その馴れ初めは?
 そう聞いたところで、頬を赤らめつつ長身ポニテが言葉を始めた。
 いわゆる契約の言葉と言うものだろう。
 ただ、そこで一つの問題を投げかけた。

「いま、夜天の主、と言ったな? 君たちを生じさせていたのが闇の書であるなら、闇の書の主もしくは闇の主、となるんじゃないのか?」

「「「「「・・・あ」」」」」

 魔法関係者及び八神家絶句の指摘であった。
 未だヴォルケンズははやてちゃんを「闇の書の主」と呼んでいるが、夜天の主という言葉は心揺さぶられるそうだ。

「666ページを集めるという目的は、魔力収集が目的なんじゃないんじゃないか?」
「莫大な力を得る、その行為が間違いだと?」
「力を得るだけなら、ひとり一回なんてルールは意味がない。莫大な魔力を持つ相手から何度も取れた方が利便性が高いだろ」

 そう、そのはずなのだ。

「では、我々は、あの魔導書の目的は・・・」
「情報収集、かな?」

 起きあがった天災はにこやかにほほえんでいた。

「はやて君が奪われ続けていた魔力だが、状態保持など目じゃないレベルで奪われていたのは間違いない。では何のために? 状態維持ではない程の魔力を集めなければ「常態」を維持できないと推察できないかね?」

 瞬間、俺の脳裏にあり得ないものの情報が浮かんだ。
 それは、巨大な記録装置にして・・・

「神帝ブ○アー・・・」
「それや、風間さん、それや!!!」

 どうやらはやてちゃんも元ネタをご存じのようだ。
 くるっぽ状態の周囲にネタの説明、ではなく意味の方を説明した。

「なるほど、無限に魔法を収集し記録し続ける魔導書。無限に記録し続けるがゆえに、その記録保持にエネルギーが必要、か。実に論理的な視点だね」
「・・・未だ信じきれん。しかし、風間といったか。貴様の指摘は我々の揺らぎに一撃を加えるに十分なものだった」

 既に記憶からぬぐい去られていることは検証不可能だろう。
 しかし、言動や行動を支配するコードのはしはしに過去の残滓が残っている可能性は大きい。

「どうでしょうか、俺の知り合いにそういう細かいことが得意な連中がいるんですよ。預けてくれれば、解析させますけど」

 あの職業痴女と行動派酒樽が本気になれば、いろいろと判る気がする。

「・・・風間さん、それって、他の人の迷惑とかになりませんか?」
「迷惑かぁ、うーん」

 ちょっと首をひねった後、はやてちゃんの膝に抱かれている少女に視線を向ける。

「いま、膝に乗ってる彼女。今までいなかった存在がそばにいて迷惑だったこと、ある?」
「ありません!!」「はやてぇ・・・」

 うれしそうな少女を抱きしめつつ、はやてちゃんはあの魔導書を俺に預けると決めたのであった。