第五話

第五話

 

 会議結果を翌日のLHRで話しているところで、教室の扉が開いた。

「・・・二組クラス代表が、一組クラス代表に宣戦布告に来たわ!!」

 艶やかな髪の毛をツインテールにした小柄美少女が教室の入り口にたっている。
 それは、一年を越える期間をあけた再会。

「鈴、鈴じゃないか!!」
「やっほー、一夏。元気だったかしら?」
「なんだよ、なんでいきなり宣戦布告とか言い出すんだよ!!」
「いや、ほら、昔の仲間がライバルとして登場とか、一夏好きでしょ?」
「・・・実は結構燃えた」
「ほらぁ」

 にっこり微笑む鈴に俺はグットサイン。
 実は先日の会議の後、一夏を襲撃しようとしていた鈴を引き留めて、この茶番を仕掛けたのだ。
 当初、女に囲まれた一夏を見て半キレ状態だった鈴だが、俺が何も変わっていないことを強く説明すると、逆に肩を落としていた。
 だから一夏の好む演出で印象を強く押そうと小芝居を仕掛けたのだが、どうやら正解だったらしい。

「・・・二組クラス代表の凰鈴音です。其処にいる一組のクラス代表の一夏と祐司とは中学時代までの幼なじみでした。この朴念仁どもの被害を受けたら相談に乗りますからクラスの違いを気にしないでね」

 にっこりと、鈴にぴったりな明るい笑顔で挨拶して彼女は去っていった。
 その後、箒からの追求を受けた一夏であったが、織斑先生の出席簿介入で事なきをえて、議題進行を続けるのであった。

 

 

 余裕ある幼なじみスタンスを確立した鈴は、小中学生時代の一夏の写真をばらまくことで二組を掌握。
 つうかやってることは俺と一緒。

「やだ、祐司も?」
「一番おいしい取引材料は残してる」
「・・・あー、いろんなモノと引き替えになる、あれ?」
「そう、あれ」

 晩飯、食堂での事。
 俺、一夏、セシリア、箒と言うメンバーに鈴とハミルトンさんが加わった。
 なんでも鈴とハミルトンさんはルームメイトとか。

「なー、祐司、鈴。あれってなんだ?」
「俺は、一升瓶ラッパ飲み赤鬼」
「私は、お手伝いしてお皿を割ってしまった青鬼」

 どちらも同一人物のことだが、本人でも気づかれないような隠語は必要な相手でもある。

「・・・祐司、鈴。おまえら、そんな危険なモノをドコで手に入れた?」
「「たまたま?」」

 実際、俺も鈴もタマタマだ。
 で、この他の写真も含めて「戦女神の休日」という写真集が出せるような量をため込んでいる。
 正直、この写真があれば篠ノ之束にISを新規で制作依頼できると確信がある。
 しないけど。

 それはさておき、猛烈な勢いで不機嫌になってゆくセシリアと箒をみて、何を話そうかと思っていたところで割り込む陰一つ。

「どもども~、今年のクラス交流戦を大いに盛り上げることに成功した功労者である一組のクラス代表たちに取材に来た二年の黛でーす! はい、これ名刺」

 流れるような勢いで俺、一夏、セシリアに名刺を渡す二年の先輩。

「IS男子ってだけでも取材したかったのに、こっちの準備をぶっちぎって学年全体を巻き込んだイベントに仕立てた仕掛け人達に話を聞こうと思ってきたんだけど・・・」

 にやっと笑って一夏とセシリアをみる黛先輩。

「仕掛け人って誰かな?」
「「「「「・・・」」」」」

 なぜか話を聞いていただけのクラスメイトまで含めて俺を指さしやがった。


「おーおー、君が噂の阪上君だね!!」

 ぱんぱんと嬉しそうに俺の肩をたたく仕草は近所のおばちゃんみたいであった。
 が、不意に織斑先生の言葉を思い出す。
 そう、彼女もまたIS学園の生徒であるのだ。
 距離感がおばちゃんぽくっても仕方ないだろう。

「あ、あれぇ、なんで私、阪上君にこんな温い視線で見られてるんだろう? なんか私やっちゃった?」
「黛先輩、無理にお姉さんぶらなくても、ね?」
「え、えええ、エー? もしかして私、痛い人扱い? 何で何でぇ?」

 割とにこやかな空気の中始まった取材は、結構まじめなものであった。

「いやいや、私たちみたいに一通りの学園行事を通して経験していると、一番後悔するのが『クラス代表交流戦』なんだよねぇ」

 曰く、告示から行事までの期間が十分あいており、いろいろと準備できたはずだとか。
 あの頃であれば、国家代表候補と一般性との差など大きくなかったのだからジャイアントキリングのチャンスだったとか。

 で、それを実践した一組だけではなく、その情報を学年全体に行き渡らせることで指針を示して、その努力の多面性を考えさせ、一組一人勝ちなどと言う退屈な結果をひっくり返したばかりではなく他学年も見に来たくなるようなショーアップしたという何とも気恥ずかしくなるような褒め殺しに思わず顔が赤くなる思いだった。

「い、いやぁ、自分は、その、クラス代表交流戦って、こう、もっとお面白くなる企画だなっておもったから一夏に相談しただけで」
「嘘嘘、嘘ですよ、黛先輩。俺に話を持ってきたときには既に『一組を巻き込む』って言い切ってましたし」
(わたくし)に話を持ってきたときには、既に学年を巻き込む算段を相談されましたわ。・・・計画書持参で」
「「「「「(うっわぁ)」」」」」

 なぜかクラス以外の生徒まで俺を胡散臭そうに見ているのはなぜだ?

「そっかぁ、さすが阪上君だねぇ」

 うんうん、と頷く黛先輩であったが・・・

「なにがさすが何ですか?」
「だって、一年のクラス代表会議をわずか一日で掌握したって聞いてるわよ?」
「いやいやいや、参加者全員がノリよくボケただけですってばっ、な、そうだよな、セシリア!」
「・・・」
「なぜ視線を逸らすし」

 クラス内部は人心掌握の賄賂を渡している。
 これは事実なので避けないけど、この前の会議は違うじゃん、違うじゃん。
 マーヤの脅威(胸囲)から逃れるために、必死だっただけじゃん!!

「あー、はいはい、阪上君はシャドーフィクサーで居たいって事ね」
「なんですか、その厨二病に理解がありますよ、という不快な態度は」
「大丈夫大丈夫、記事の上では完璧に一般人って事にしておいてあげるから」

 そのまま軽く会話した後で写真が撮影され、取材完了となったのだが、後日発行された校内新聞の記事はまともなのだが俺の写真がなぜか禍々しかった。
 どういうフィルターを使ったのじゃ、と思わず絶句した俺であった。

 

 


 一夏から話があると呼び出された屋上。
 ちょっとドキドキしていた私がいたが、ふられた話はドキドキどころではなかった。

「なぁ、鈴」
「なーに?」
「おまえ、祐司のこと好きだよな?」
「そりゃそうよ、嫌いな奴の家まで出張料理になんか行かないわよ」

 にこやかに答えられた私、ナイス。
 自画自賛な私に冷や水が浴びせられた。

「・・・解ってて話を逸らすなよ、鈴」
「・・・え?」
「おれは、鈴と祐司なら恋人同士になってもいいと思ってる、そういう話をしてるんだ」

 げぇぇぇ、ナンデナンデ一夏ナンデェェェ!
 一夏、あんたそういう事言うキャラじゃなかったでしょ!!

「あー、実は」

 何でも、私が引っ越した後で受験勉強のための男宿泊会があったそうで、その際に私が誰を好きだったかという話になったそうだ。
 一夏は、祐司を。
 祐司は、一夏を。
 弾と数馬は両天秤とかホザいたそうだ。
 くそ、弾、数馬、おまえ等の罪を数えろ。

 確かに両天秤だって言われたら反論できないけど、私にだって心の動きってものがあるのよ!!

 確かに最初に惚れたのは一夏。
 だけど、ぐっと引かれたのは祐司。

 一夏に明け透けな仲間意識を向けられるとうれしいけど、祐司に女の子って扱いをされると揺れる、トキメク、とろける。
 そういう意味では両天秤だったことは事実。
 でも、女としては祐司に軍配を揚げるわ。
 だって、だって、ちゃんと女の子って意識してくれるし。
 一夏相手だと友達になれても恋人になるためのステップが見えないのよね。
 まぁ、打算的すぎる話だけど。

「率直に言うと、祐司は恋人にしたい異性ね。とはいえ、祐司ってモテルからなぁ」

 苦笑いの私に一夏は微笑む。

「鈴と祐司が並んで座ってると、まるで長年連れ添った夫婦かって感じだぜ? 同じく幼なじみとしちゃぁ嫉妬するレベルだ」
「あら、大切な幼なじみをとられた気分?」
「つうか、千冬姉の婿候補だからなぁ、祐司」

 そっちかよ!!
 つうか・・・

「其処のところ、くわしく」
「お、おう」

 そのとき、一夏の初恋相手が中年婦人と聞いて背中が寒くなったり、祐司の初恋が千冬さんで、それを千冬さんも知ってて、最終的なラスボスが千冬さんと悟ってさらに背筋が寒くなったりで。

「あんたら、あたしの背中を凍死させるつもりなのかしら!!」

 くそ、なんで私の仲間の男どもはやっかいごとばかり巻き起こすのかしら!!

 

 

 

 正式ではないのだが、クラス代表会議、っぽいものが結構な頻度で開かれているらしい。
 其処に一夏と俺は呼ばれていないので、少しすねた一夏であったが、箒からフォローされて少し持ち直した。
 とはいえ「乙女の秘密会議だ、察しろ」は無いと思うぞ、箒。

 それはさておき、好きなモノが食べたい一夏に対して、必須消費カロリーの特訓を組み合わせたところ、非常に大人気になった。
 その必須消費カロリー特訓表が。

「んーんー、あとひゃっかい、あとひゃっかいぃ~」
「うでがふとくなる、なっちゃう、でもおなかが太くなるのに比べればぁ・・・」
「むねがやせる、むねがやせるでもはらもやせるぅぅぅぅ」

 なんというか亡者の群だな、うん。
 そんな百鬼夜行が続く中、とうとうクラス代表交流戦が行われることになった。
 この交流戦には学園の関係者や各国のIS関係者などが呼ばれるのだが、基本、一年なんかはISに初めて乗りました、という感覚しか見とれない内容か国家代表候補が蹂躙という内容なので、あまり観覧の人気がない。
 が、今年はよけいなことをした人間が居たため、大いに盛り上がって準備が行われ、非常に質の高い内容が予想されているとか何とか。
 そんな影響で、二年や三年の先輩たちも見に来ていて楽しみだとかなんだとか。

「正直、胃が痛いです、織斑先生」
「自業自得だな」

 俺は観客席ではなく管制室に居た。
 ま、簡単に言うと警備事情。
 一夏のバックには織斑先生が居るわけだが、俺のバックにはそういう存在がいない。
 そのため日本の組織はもちろんの事、世界各国からオファーが来てたり脅迫が来てたりする。
 そう、脅迫。
 家族を誘拐したとか恋人をさらったとか。
 おまえ等、その独自文字で手紙送ってくるなよ。
 つうか、相手に読ませたいなら相手の立場に立って読ませろって。
 まぁうちの両親を誘拐なんて物理的に出来ないし、恋人だって居た試しはないので全部嘘なのだが。
 そんなわけで、アホな接触がないように隔離されてしまったのだ。
 明らかに迷惑千万。
 この脅迫にUSAも噛んでいるというのだから、どうにもこうにも嘗めすぎではないだろうか。
 その情報もEUの各国情報部経由ではいってくると言うのだから涙がでるほどありがたい、ということにしておこう。
 今のところ、新大陸系は下手扱いてる。
 中国も何やらイヤらしいことを企んでいるようだし。
 EUは結構リードしてるという自尊心があるので動きは鈍いが、EU以外の足を引っ張る気満々でもある。
 数少ない安心できる国として、カナダ・オーストラリアがあるのだが、どちらも旧英国信託領。
 完全に気を許してはいけないこと請け合い。
 そうなると、ロシア、ということになるのだが、こっちはこっちで国土が広いことが国の力になると信じている感じがあるので、怖いと言えば怖い。

 そういうわけで、隔離、ということになっている。

「業界では、一夏が脳筋、祐司は謀略系という認識らしいぞ」
「なんて恐ろしいことを言い出すんですか、織斑先生」
「しかしだな。一夏はオルコットを追いつめたという事実が、IS適正を越えた肉体派として伝言されているし、祐司は祐司でIS学園内を口先一つで転がしていると噂になっているぞ」
「全く事実にない虚構です!」
「・・・先日な、UKのIS担当官から相談があったんだ」
「・・・はぁ」
「最近、オルコットもウエルキンも運動過多気味だが、IS学園では何かを強要しているのか、と」
「えーっと、それは食堂のデザートがおいしすぎるのではないかと」
「その辺は知っていたからな、必須消費カロリー特訓表を提供したら・・・」
「提供したら?」
「UKどころかEU全体に広がりつつあるそうだぞ、必須消費カロリー特訓表」
「・・・俺の所為じゃないですよ?」
「まぁ、そういう理由もあって、各国がおまえを求めているんだろうなぁ」
「結局、織斑先生の責任じゃないですかぁ!!」
「まぁまぁ、何なら責任をとってやっても良いぞ?」

 えーい、もう、なんつうか、いろいろと踏み込まれると弱いな、俺。
 あと、山田先生。
 その「きー、いちゃいちゃしやがってぇ」というリアクションは残念すぎて噛ませ犬臭しかしませんから。

 

 一年のクラス交流模擬戦は大いに盛り上がった。
 やはり対戦することを意識して情報収集したり、自分たちのクラス代表の特色を出すための特訓をしたりというのがクラスの一体感を生んだわけで。
 これを思いついた祐司の特異性が浮き彫りになったというのは間違いない。
 加えて、専用機を持たない祐司のデータを得たい各国がもの凄い勢いで勧誘競争をしている関係で、俺にも伝を頼る話が来ているが一様に断っている。

 だって、君たち信用できませんから。

 特に、我が国のISの開発をしている倉持。
 先日のクラス代表会議で知ったんだけど、三組のクラス代表の専用機、投げ出したって聞いてる。
 俺の専用機を開発するためにリソースを絞らなければならなくなたっとかで。
 いや、俺に専従すると言えば聞こえは良いけど、実際は代表候補と交わした契約を投げ出したって事だし。
 そんなんじゃ、いつ俺の白式も投げ出されるか解らん。
 そんなわけで、祐司を紹介してもおかしな事が起きると確信できる企業に繋ぎなどとらせられるわけが無く、完全に遮断。
 これは千冬姉も同じ意見だ。
 如何に暮桜の制作元だからって、信用できないことおびただしい、と。

 それはさておき。

 4クラスの総当たりで行われた戦績は結構偏った。

 一位 一組
 二位 二組
 三位 三組、四組

 順位はついたが、実際の試合は僅差ばかりで接戦中の接戦だった。
 準備時間に勝った一組が一位になっているが、現実的な話をすれば四位になってても可笑しくない試合ばかりで、二年三年が「ジャイアントキリング」を狙って出来ていたはずだという意見が知れるほどに実力が伯仲していた。
 やはり専用機持ちでも、その機体特性が馴染んでいないというのが正直なところだろう。
 後一年もすれば専用機持ちの強みがでるところだろうが、いまだ機体特性と自分の戦略が噛み合っていないという時期なのだろうと思う。
 そういう意味では、一歩早く専用機の実践的訓練を出来た俺に軍配が上がったといえる。
 逆の意味では、先行した部分が一歩だけだったともいえるのだが。

「・・・というわけで、優勝特典に関しては一組で持ちますが、権利に関しましては一組を通した学年全体で共有したいと思います」
「「「「「わーーーーー!」」」」」

 クラス代表会議で俺がそう発表すると、会議室は歓声にあふれた。
 まず、会議室の優先使用権は一年のクラス代表会議で押さえることになった。
 これにより、密接な関係が一年で組めることになる。
 加えて訓練機の優先権は、一組で押さえさせてもらうことになったが、こちらも抽選漏れした生徒からの要請があれば回すこともある。
 さらに、デザートは・・・。

「デザートに関しましては、食べ放題を実施しないことを食堂側と契約し、一学年においては食後のデザートの有料枠を撤廃しました」
「「「「「きゃーーーーー!!」」」」」

 そう、一年間デザート無償というクラス交流戦優勝特典を一年全体に広げた代わりに、量的な上限をもうけることで条件契約に成功したのだ。
 まぁ、祐司の「特訓表」を見れば、上限なしで食べるとかあり得ないわけで。
 もう一口ほしいと思ったときに「特訓表」をみるといろいろと萎えると聞くし。
 正直、あの特訓表が自主トレ室と食堂に張られているのを見ると鬼気迫る何かを感じるのでありますよ、男子の俺でも。
 そんなわけで、食べ放題よりもみんなで楽しくと言う方向性に舵が切られたのはやはり計画書通りで。
 恐ろしい男であることを理解させられた相手とはやはり祐司。

「・・・正直、俺が一位にならなかったときの方が怖い計画がかかれていたんだけどな」
「見たい気もするが、絶対に読みたくない話だな」

 視線を逸らす箒であったが、苦笑いのセシリアは既に読んでいた。
 イイ性格すぎると、計画書を読んだ時点で肩を落としていたものな。
 とはいえ、この計画性が祐司の習熟度の積み重ねを生んでいるのだから仕方ない。
 一見関係ないように見える二つは、密接につながっている。

 祐司は、こう、努力の積み重ねとその先にある成果を見据えることが出来る人間だ。
 宿題をこつこつやることとか、練習を積み重ねるとか、ドリルをこなすとか。
 祐司曰く、育てゲーの教育パラメーターを考えればわかりやすいといっているが、俺たちには理解できなかった。
 ただ鈴だけは何かを感じたらしく、料理や勉強でそっちの積み重ねを積極的にしていたもので。
 その成果が中国国家代表候補であり専用機持ちであるという事実だろう。
 もともと、功夫の積み重ねは中華文化によるところだ。
 そういう意味では文化的に本家ともいえる。
 しかし、その積み重ねの際にいろいろと魔改造した何かを混入して効率をのばすというのが日本人らしい祐司の特性なわけで。
 さすが祐司というべきか、魔改造国民日本と言うべきか。

「ですが、正直に申し上げますと、ISとは関係なしに頼りがいのある方ですわよね?」
「あー、確かに地元でも頼りになる奴って評価がたかかったよなぁ」
「そうなのか、一夏」
「地元の商店街が郊外型スーパーに負けてないのは祐司のテコ入れのお陰だしな」
「「・・・」」

 神妙な顔をして箒もセシリアも黙ったが、これに関しては大したアイデアではないと本人は言う。
 本人は言うが、逆に目から鱗の内容でしたと商店会のおっちゃんはいってた。

「ちなみに聞くが、どんな悪辣な手法なんだ?」
「いやいやいや、結構みんなやってるようなことをやったんだよ」

 うん、解説されれば誤解のないふつうの内容。
 ただし、それを実現させる手法が斜め上なだけだ。

「簡単に言えば、ふつうの家庭がほしがるモノを常時倉庫保管しておける共同集積所を作って、注文はネット経由。最速1時間以内にお届け。夜間発注も受付みたいな」
「「・・・え?」」

 これは商店街とその周辺家庭だからできる技だ。
 逆に対応範囲を広げると、お届け時間にタイムラグができる。
 で、この発送は一般商店ではふつうのサービスだし、商店街周辺を購買層に固定できるなら送料無料なんて当たり前で対応。
 さらに、店舗販売ではないので、倉庫からの荷出しや輸送はアルバイトでも可能。
 というか各家庭に滞留している「萌えない」自宅警備員なんかをむりやり仕事に巻き込んだりして、地域全体で支えようとか言う流れにしたのは恐ろしい手法で。
 少なくとも、配送関係に就職させた家庭とその周辺は協力的になるし、ポストニートを抱える家庭も現金収入及び就業訓練先として維持を求めている。
 つまり、もうなくならせることはできないので、コンビニに行くぐらいならその分を商店街に使うという流れになるわけで。
 もちろん、地元コンビニも対抗してきたが、地域経済が一体化して支える商店街ネットに追従できるわけもなく、今では棲み分け状態になっている。

「・・・悪魔のような手法だな」
「正直、本国に紹介したいのですが」
「就業環境でもニート崩れに負担にならないように気を使ってるしなぁ。結構評判良いぞ」

 とまぁ、そんなプレゼンをした祐司は、本人曰く「やくざによる地域掌握」プレゼンと自称していたが、周辺から見ると「阪上Pによる地域ショーアップ」という絵面だったんだけど。

「そのような実績を考えますと、(わたくし)たちが彼の手のひらの上で転がされるような状態になってしまったのは仕方ないのかも知れませんわ」
「うむ、そんな才能ある人間をISが狂わせてしまったのか。なんとも言い難いな」
「箒、確かに束さんはお前の姉だけど、お前自身ではない。妙な責任を感じて謝ったりするなよ?」
「・・・う、うむ」

 あ、箒め、謝罪しようとか考えてやがったな?