激闘!円卓の十二騎士編 第緑話 己の生きる道

激闘!円卓の十二騎士編 第緑話 己の生きる道


間が開きましたが何とか投稿できました

さて、遂にみなさんお待ちかね…あの方の登場です


トーマside

「…………」

ゆっくりと…俺の意識が浮上していく

まず体の感覚が戻ってきた

足の先から手の指の先までゆっくりと神経を張り巡らせていくイメージを練る

そうすると体全身のしっかりとした感覚として戻ってきた

そして俺は、何処か柔らかい物の上で寝ていると分かった

そして、なぜ意識を失っていたのかを思い出した

と言うより、記憶の波が一気に頭の中に浮かび上がったのだ

そして、俺は慌てて目を覚ました

「そうだ……俺は…父上に……マドラスに……」

裏切られ…いや、最初から裏切られていたのか…俺は

あの日々も全て嘘……リリィはずっと……

「リリィ?」

俺はあたりを見る

そしてすぐに彼女がいないことに気が付いた

周りの光景に気が付けば、此処は何処かの1室のような場所だった

「何なんだ此処は!リリィ!何処だリリィ!」

部屋を探し、そして部屋の外に出ると、そこは庭のようなところへと繋がっていた

其処には、宙に浮いているリリィと、その姿を手ををかざしながら見つめるローブを被った男が切り株に座っていた

「リリィ!」

俺は考えるよりも早く飛び出し、その男に殴り掛かった

『バチッ!』

そんな俺の拳は男の周りに展開された障壁に阻まれた

男はローブの中から鋭い視線を俺に向けていた

「なんじゃ……助けてやった恩人に殴りかかって来るとは…恩知らずな奴じゃな」

少し嗄れた男の声でそう言った人物は、障壁を解除すると俺の手を掴んで引っ張り、空いていた手で俺の腹部を殴りつけた

「ぐっ!」

「殴っても傷口が開かんか…無事に完治はしたようじゃな…安心した」

うずくまる俺の頭上から男の声が響く

その言葉から、俺とリリィをここまで運び、俺に治療を施したのがこの人物だとは理解出来た

「リリィに……何をしてるんだ…」

「ん?見て分からんか?治療をしておる…傷口を治癒する治療をな…」

男は再びリリィに視線を戻した

俺も苦しみがまだ残る中、リリィを見ると腹部の傷口が治っていた

そこまで言って、俺は恩人に失礼な思い違いをしていたと理解した

「す、すいません!失礼なことをしました」

頭を下げる。男はそんな俺の頭を優しく撫でてくれた

その手から感じる優しさと温もりが、父のようだと思った瞬間、俺の実の父は殺され、父だと思っていた男には裏切られたのだと…その悲しみが一気に襲ってきた

そして、その悲しみをせき止める方法を今は思い浮かばず…その目から涙が溢れた…

side out

※※※※※※

※※※※※※

「リリィは…治るんでしょうか?」

向かいの切り株に座ったトーマは不安気な表情で目の前の男に聞いた

「傷は治るであろう…だが、生命体としてのこの女性は既に見つけた時に手遅れであった…」

「……え?」

男の言葉にトーマの表情から希望が消えていく

「お前達がこの空間に流れ着いた時、瀕死だが呼吸のあったお前と、既に心肺停止状態のその女が居た。状況的にお前も助かるかは絶望的な状況だった……だがな、この女がお前の助命を嘆願したのだ」

男はその時のことを語り出した

脈拍等を調べるため、トーマとリリィに触れた時、リリィから強烈な思いが伝わってきた

それは『もし自分達を見つけた人が居たならば、自分は無視しても良いので、隣の少年の命を何とか助けて貰いたい』という思いだった

なぜ普通の人間で、既に心肺停止となっているその女性がそのような事が出来たかは分からないが、己の命を顧みず、他人の命を救うように願ったその心に無視して放置を決め込む事が出来ず、トーマとその女性を自分の住処まで運び治療を施した

という事だった

「そんな……リリィは最後まで……俺のことを…」

トーマは再び瞳から涙をこぼした

一方、その姿を見ていた男性は何かを決めた目をすると、トーマが落ち着くのを待って口を開いた

「助けたいか?」

その声は優しく、縋りたくなるような声であった

トーマは言われた事が理解できず、ローブから覗く男の瞳を見つめるしか出来なかった

「その女の命を助けたいか?と聞いたのだ…ワシの力を使えば、その子の命を蘇らせることは可能じゃ…」

男の言葉に嘘を感じることは出来なかった

だが、トーマはその自分の感じたことをすぐさま信用することが出来なかった

それほど経っていない時間の中で、トーマは父と思っていた人間に騙されたのだ

いや、正確には騙されていたのだ

そんな自分の直感をすぐさま信用するというのも難しい話だ

だからトーマは悩んだ

その手をとるべきか、取らざるべきか

「悩むか少年…悩むと言うのは若い者の特権だ。必死に悩むといい。だがあまり時間はかけられん。完全に手遅れになる前にお前が判断するのだ。時間はあと1時間…1時間後にまたここに戻ってくる。それまでに考えを纏めておくのだぞ」

男はそう言うと、トーマが出てきた建物の中に入っていった

トーマはゆっくりと顔を上げ、眠っているリリィを見つめた

安らかに眠っている

あの痛みに苦しむような顔も、辛そうな顔も、このままにしておけばもうそんな表情をしなくて済む

だが、同時に彼女にもう会えないと思うと胸が締め付けられた

自分を叱咤激励してくれた彼女にもう会えない

あの笑顔に、あの声にもう会えないと思うと、トーマは溢れる涙を抑えられなかった

リリィを殺したのは自分だ…トーマはそう思っている

自分がもっと早くマドラスのことに気がつけば、もっと彼女を気にかけていれば、こんな事にはならなんだのに…

そんな自分に彼女を生き返らせてくれと、そんな事を願う権利があるのかと…

トーマは葛藤した…

そして、それから1時間はすぐに過ぎて行った……

※※※※※※

『ガチャ』

扉が開く音と共に、初老の男は再びトーマの前に現れた

相変わらずローブを深くかぶっているためその顔を見る事は出来ないが、そのローブの奥から除く瞳はトーマをまっすぐ捉えていた

「少年…答えは出たか?」

トーマの目の前に座った男はそう言って彼を見つめた

トーマもまた、決意を固めた瞳で男を見た

「……生き返らせてほしい……リリィを、生き返らせてくれ。その代償なら何でも払う…俺の命と言うならそれでもいい…でもそれなら、せめて彼女に一言謝らせてから死なせてほしい……頼む……お願いします…」

トーマは全力で頭を下げた

リリィに謝りたい…彼が願った思いはそれだけだった

謝って、その後に自分が死ぬならそれはそれで構わない

自分勝手でエゴの塊のような願いだ

それで彼女が喜ぶかなどという考えは持っていない

ただ、謝って、彼女に生きていて欲しい…それだけだ

そんなトーマの願いを聞いた男は、彼の頭を優しく撫でた

「それがお前の願いならばそれを叶えよう…。対価は要らぬ…ただ一言約束せよ…彼女が生き返った時、必ず彼女を幸せにしてみせると」

その男の言葉を一字一句聞き逃さず、トーマは頷いた

約束すると、どんな状態になったとしても彼女と共に生きていくと

「よろしい……では、儀を執り行う…少し離れていろ」

男はそう言って立ち上がると羽織っていたローブを脱いだ

その下からはボロボロだが真っ赤なロングコートが現れ、その背中には林檎を突き刺さした剣に、それを取り囲む4匹の蛇のエンブレムが描かれていた

そして、その顔には初老男性と呼べる程の加齢による皺が入っており、それはコートから見える手などからも見て取れた

そして、男は宙に浮かぶリリィに手をかざすと、膨大な魔力を発生させた

「肉体構成、魔力構成、その他問題なし、空間魔力使用量40%、その40%を肉体魔力の補填に充てる……さぁ行くぞ!リザレクション!!」

その魔法を唱えた瞬間、男とリリィは光の爆発の中に飲まれた

トーマはあまりの光に目をつぶり、辺りを凄まじい風が駆け抜けた

20秒もかからず風は止み始める…そして、先程とは違う男の声がトーマの耳に届いた

「問題は無いらしいな…久しぶりにこの肉体にも戻ったが……やはり空間の維持も考えるとあまり長くこの姿でいるのは良くないな…」

トーマはゆっくりと目を開く

男の前に浮かぶリリィの姿を見たが、同時に男の姿にもトーマは驚いた

簡単な言葉で言えば、男は若返っていた

腰まで伸びていた髪の艶も、手も顔も、初老どころか20代前半の青年の姿と言えた

そして男はトーマを見て微笑むと、彼の前にリリィを移動させた

そして、ゆっくりと地面に落ちていくリリィをトーマは慌てて下から手を伸ばして抱き留めた

「ん……んん」

そして、トーマはその光景を目撃した

ゆっくりと、抱き留めた人の瞳が開く

その瞳には正気があり、生きている力を感じた

その瞳は自分の顔を捉えると、今度は途端にその瞳を潤ませた

「トー……マ?」

トーマもまた、その声を聞いて瞳から溢れる涙を止められなかった

震える声で、だけれどもしっかりと彼女に自分の声を伝えるために、彼は彼女を抱きしめてこう言った

「……あぁ、そうだよリリィ……良かった……本当に良かった…」

お互いに抱きしめ合う形となった状態で、リリィは彼の声を聞いて漸く今が現実なのだと理解した

夢ではないと、死後の世界でもないと

彼は生きて、そして何故か自分も生きているのだと

また生きて、彼に出会えたのだと

「トーマ……トーマ!」

何度も、何度も、互いの名を呼んで、互いを抱きしめた

もう離さないと、もう離れないと言わんばかりに、その体を抱きしめた

「良かったな、少年」

この奇跡を起こしてくれた男にトーマは最大級の感謝を述べた

そしてリリィもまた、トーマから自分を蘇らせてくれた人だと聞いて礼を言おうとその男を見た瞬間、リリィは固まってしまった

驚愕な表情を浮かべて

「そう言えば、まだ名乗っていなかったな。私の名前は大道連夜…お前達が父と呼んだいたマドラスの最大の敵だ」

男の言葉を聞いて、トーマもまた驚愕の表情を浮かべて固まってしまった

『そう言えば…』トーマは思い出した

その顔を何処かで見た覚えがあると思ったのは自分も見たことがあったからだ

かつてマドラスの城に住んでいた頃、マドラスの部屋にあったのだ

彼の写真が、そして、マドラスが世界を絶望させるために生み出したナイトオブセブン…大道連夜の姿と声を持ったクローン人間

それの元になった人間、マドラスが唯一自身の天敵と認めた人間が目の前にいる

そう思った瞬間、トーマの体から今まで眠っていたはずのドス黒い意志が再び彼の体を侵食し始めた

『殺せ!殺せ!!殺せ!!!目の前の敵を殺せ!!!』

脳に直接響く声、もがき苦しむトーマの目は血走り、その瞳には狂気が宿ろうとしていた

その光景を目の前で見ていた連夜は身構えたが、次の瞬間、トーマの体が光り輝くと、笑みを浮かべて構えを解いた

「あ……あれ?苦しくない?なんで…」

『トーマ大丈夫?トーマ!』

「リリィ?なんでリリィの声が念話で聞こえるんだ?」

思わずそういったトーマは周りを見渡すが、リリィの姿はどこにも無かった

「お前と彼女は今、一つとなっている。名付けるならば、リアクト…だな」

「リアクト?……って、俺とリリィの体に何をしたんだ!!」

激昂したトーマは拳を振りかぶって連夜に殴り掛かる

「それを今から説明してやる…黙って聞いてろ」

その拳は連夜に軽く受け止められた

「現在、お前の中で暴走状態にあったマドラスの魔力はリリィとリアクト……まぁつまり、一体化することでその闇の意思だけを無効化し、お前の本来持つ魔力とマドラスの魔力を溶け合わせている。
これによってお前は常人では制御不能なレベルの魔力を獲得し、同時に肉体の瞬発力や反応速度、まぁようは肉体レベルもかなり底上げされたという事だ」

そう言い終わると連夜は片手を広げ、空間から銀色の書物を取り出した

「まぁ当然、リリィ一人にそれだけの魔力制御を行えるはずが無い。奴がやっているのはお前の中で暴れるマドラスの魔力の闇の意思の無力化だけだ。魔力自体の制御を行っているのはこいつ、銀十字が行っている。リリィと銀十字、そしてお前、この三位一体をリアクトと呼ぶ。リリィとお前は共にあり、銀十字とお前もまた共にある…どちらも欠ける事は出来ないし、どちらも欠けることは無い」

『初めましてマスター、私は銀十字、リアクトの際は貴方の目となり耳となり、そして、貴方を害する魔力を貴方の物として還元しましょう』

銀十字と呼ばれたストレージデバイス状のソレはトーマの頭に直接話しかけてきた

戸惑いながらもそれを手に取ったトーマの右手に、それは収まった

まるでその手の中にあるのが当たり前のように、トーマもまた不思議な一体感を感じていた

「そして、リリィに何をしたか?という質問だが、リリィをあの状態で蘇生させるのは色々と不都合があるんでな、世界の理的に…。なんでユニゾンデバイス……とはまた違うがまた似たようなものとして蘇生させた。心配せずともその肉体はお前と共に成長していくし、子も産める。人並みの幸せとやらは手に入れられるだろう」

何処か懐かしそうにそう話す連夜の言葉を完璧に信用した訳では無いが、中にいるリリィからも『信用しなきゃ』と言われたのでとりあえずは信用することにした

「なんというのか……ありがとう。でも最後にまだ腑に落ちないことがある…なんでこんな力を俺達に与えたんだ?」

「当然の疑問だな…答えは簡単だ。お前達にも奴と、マドラスと戦ってもらいたいからだよ。そして………」

その先を聞いたトーマとリリィは驚愕の事実を知ることになった

そして、それは自分達に力を与える納得の話であると共に、マドラスを倒せるかもしれないと言う僅かな希望が形になり始めた瞬間だった…

※※※※※※

「さて、ではお前達を現世に返すとしよう」

トーマと彼から分離したリリィは二人で頷いた

その方法は単純、強力な魔力で空間に穴を開けて、その穴の中にトーマとリリィが飛び込むというもの

そして、その強力な魔力にトーマの持つマドラスの魔力、そして連夜の持つ魔力を使う事でこの空間を突破した時に現れる鎖も断ち切る事が出来るというものだった

「でも、なんで連夜さんもこれで脱出しないんですか?」

「俺は一度自分の力でこの空間から出ているからな…鎖の拘束もより強固になっているし、どちらかはこの空間の中で魔力を放出して穴を維持しておかねばならない…だからお前達が行くのさ…頼んだぞトーマ、リリィ」

そう言って2人の頭を撫でる

何処か照れくさそうな2人は何も言わずにそれを受け入れた

「そして最後に、お前達にちゃんとした名前を与えよう。と言っても、それはお前達の生みの親がお前達に名付けた名前だ…幼い頃の記憶故にお前達は忘れていたようだがな」

そう言って連夜は2人に自分たちの本当の名前を与えた

「トーマ、お前はトーマ・アヴェニールだ。そしてリリィ、君はリリィ・シュトロゼック…この名を伝えることで俺と、お前達を産んだ両親の祈りとする…困難な道を選ばせたが…生きろよ。俺の息子達と同い歳くらいの子供達を戦わせる大人を許せとは言わん…だが生きろ…」

2人の肩に手を置いた連夜はそう言って自分の魔力も少し二人に分け与えた

「トーマ……アヴェニール……」

「リリィ……シュトロゼック…」

己の真名を呟き、そして胸に刻む

次に2人が顔を上げた時、その瞳は決意に満ちたりていた

「そして最後に……これは俺のワガママだが……息子達を頼む…出来れば、手を貸してやってくれ」

そう言って連夜は2人から距離を取ると、己の魔力を練り上げ始めた

「「………はい!!」」

力強く頷いた2人は共に手をとる

唱える言葉は一つ……『リアクト』

その言葉と共に二人の体は一つとなり、母体となったトーマの髪は茶髪から銀色に、瞳は紅く染まった

そして、その体に赤黒いマドラスの魔力が侵食するような模様が浮かび上がるが、トーマは痛みを感じるどころが、リリィと銀十字のおかげで湧き上がる力しか感じなかった

更に、その左手にはトーマが以前使用していた物よりも巨大で禍々しいオーラを宿したガンブレードと、右手には銀十字が収まっていた

「行け!トーマ!」

「はい!!」

連夜の手から打ち出された砲撃魔法と、トーマのガンブレードから打ち出された魔力が空中で衝突し、その場の空間が歪み、穴が出来た

トーマはそのまま一気にその穴に飛び込んで行った

連夜はその後も魔力を放出し、穴の形成を維持していた

そして、トーマの魔力が穴の向こうから感じなくなったことを確認し、魔力の放出を止めた

『シュゥゥゥン』

穴はすぐに閉じ、連夜はそれを確認すると自分の体を確認した

「魔力がそこまで減っていない……まるで誰かが俺の魔力を制御しているかのような……」

そこまで言って連夜は自分の体の異変に気付く

ボロボロだった彼の服が徐々に再生しているのだ

「……そうか、なるほどそういうことか……だからリリィはほぼ死んでいたというのに自分の意思を込めるなんていう芸当が出来たわけか……」

そう言って密かに笑う彼の肩から、1匹の黒猫が現れた……




大道連夜、なぜ彼はあらゆる物質が存在しない無の空間で生きながらえる事が出来たのか?

その全貌が明らかに!

次回 魔法戦士リリカルなのは the next 〜永遠の名を継いだもの〜

外伝 英雄の地獄