激闘!円卓の十二騎士編 第肆話 思いと怒りと絶望を…

激闘!円卓の十二騎士編 第肆話 思いと怒りと絶望を…


長い間をあけました
本当にすみません。社会人になって忙しい日々になかなか筆を取ることが出来ませんでした。

詳しくは活動報告で


「カハッ!」

血反吐を吐きながら、後ろに飛ばされたのは空我であった

ギンガと空我、2人のバトルフィールドとも呼べるこのフロアの壁に空我は突っ込み、崩れた瓦礫が下に落ちる

それでもその瞳に宿る希望の炎は消えてはいない

「くっ……無茶苦茶強いな…チクショウ!」

己の変化した腕(シェルブリッド第一形態)で下を殴りつけ、その反動で空中を回転して着々、そして真っ直ぐ、ただただ真っ直ぐに前を見る

其処には、腕のアンクルを壊し、アルター能力を取り戻した空我にやや同様していたものの、それもだいぶ収まりつつあるギンガが立っていた

そして、その背中に揺れる漆黒のマント

独特の特徴的な文字だがしっかりと10と刻まれたそのマントはマドラス直属の部隊、ナイトオブラウンズの証

空我は今1度自分の状態を確認した

『背中に残る爪はあと1つ…拳は至って平常運転ヒビも無し…次の段階への移行…問題なし』

確認が終われば反撃だ

先ほど腹部を強烈に蹴り飛ばされたがそんなものは得意の防御魔法と波紋でなんとでもなる

そこまで手痛い一撃でもなかったことから、空我はすぐさま自慢の拳を後ろに引き、その瞳でギンガを捉えた

『パキパキ…』

主の意思に従うように最後の爪が砕け散り、そこから吹き出すは主をより前に押し出す為の虹色の光

「抹殺の……ラストブリッドォォォォォォォォッ!!」

直線距離にして50mもない二人の距離がみるみる詰まっていく

拳を突き出す空我、一方ギンガは応戦する構えではなく受け流すような構えを取った

『軌道を変えるか?』

一瞬彼の思考にそんな行動の選択肢が生まれるがすぐさま却下した

と言うより、そもそもこの力に軌道を変えるような応用の利く機能などついてはいない

あるのはただ真っ直ぐ、どこまでも真っ直ぐに、目の前の敵を粉砕するための能力だ

「甘いわよ!!」

滑るように空我の拳を避けたギンガはお手本のような動きでまっすぐ突っ込んでくる彼の腹部に膝蹴りをくらわせようとした

だが、先に鈍い音と共に痛みを感じたのは空我ではなく自分であった

「ゴフッ!」

思わず声が漏れる

衝撃が真っ直ぐ己の体を突き抜けたのを感じたギンガは吹き飛ばされることなかったが、強烈な吐き気と痛みを感じた

そしてその原因を目で見る

そして見つけた…己の腹部に正しくめり込んだと言える空我の拳を…

「そんな…確かに回避したと思ったのに…」

彼女の言う通り、空我の自慢の拳(シェルブリッド)は回避されていた

その証拠に、しっかりと彼女の顔の横にその拳はあった

腹部にくらったのは彼の普通の拳だ

だが何故…普通の拳の一撃がこれほどのダメージを生んだのかが分からなかった

「うおぉぉら!!」

しっかりと拳をふり抜き、空我はギンガを後ろに飛ばした

「何故か?って理解出来てなさそうな顔をしてるから教えてあげるよギンガさん…俺は生まれてこの方、このシェルブリッド以外に攻撃系の魔法は使えたことがない。このシェルブリッドも攻撃魔法と言えるのかは怪しいけどね」

やや自虐気味に空我はそう言った

「あと使えるのは防御魔法くらいだ…だから、それはバカみたいにその強度なんかを母さんやヴィヴィオ姉さんに鍛えられたよ。さっきのは強化した防御魔法を拳の先端に集中させて、言わば防御魔法で殴りつけたのさ。咄嗟にやってみたけど上手くいったみたいだね」

それはなんの偶然か、別世界で実際に武装として使われているピンポイントバリアパンチと呼ばれるものと似ていた

空我の説明を聞き終わるのと吐き気が治まるのとがほぼ同じだったのか、ギンガはゆっくりと立ち上がった

『この状態で新しい攻撃法や応用を思い付くなんて…流石は連夜さんの息子…と言ったところかしら。しかも攻撃が魔力じゃなくて単純な力だから余計にタチが悪い…』

戦闘機人として人よりも遥かに早いスピードで傷の治癒は出来る

だが、先程の一撃はギンガも予想外の一撃だったためかダメージがでかいのだ

一方の空我は最後の爪を使い切った為に拳しか武器はない

その為、彼はさらにもう一段階上の力を使うことにした

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

彼の周囲の物質が分解され、虹色の光の柱がそこかしこから伸びる

その光が彼の拳を包んでいき、より鋭利で、攻撃的なフォルムへとその姿を変えていく

シェルブリッド第二形態…より破壊力と突進力を強化したその拳は、手の甲の部分に開閉口のようなものがあり、攻撃の際はそこが開放され、さらなるエネルギーを拳に送り込む仕様になっていた

更に、爪の代わりにトグロを巻いた蛇のように装着された黄金のムチは、その通りムチとして武器にも使え、高速で回転して空我に制空権と突進力を与えるプロペラの役割も果たす代物だった

「それが新しい形態…ならこちらも…奥の手よ」

空我に対して、手を抜ける相手ではないと判断したギンガはその両の拳を胸の前で合わせ、気を高めた

そして…何かのスイッチが入ったかのように、その瞳の色が黄金色に変わる

「戦闘機人モード…」

空我がそう呟き、ギンガが笑みを見せてそれを肯定する

だが、かつてのように荒々しい気は一切感じられず、凛とした…まさしく明鏡止水の境地と呼べるような状態に、ギンガはなっていた

「さぁ空我…ココから先は、私も本気よ」

途端に、ギンガの姿が消えた

だが、本当に消えたわけではない

高速で動いて視覚が追いついていないだけ

それを理解していた空我は身構えた

そして、身構えた真正面に現れたギンガの拳が彼に突き刺さった

「ガッ……は…」

無論、突き刺さったとはいえ本当に貫いたりした訳ではない

だが、ある意味それは貫かれるよりもキツイものだ

そう……貫かれた場合はそこから先は通り抜けていくだけだ

しかし、貫かれずそれがその場所にあるという事は、そのまま拳を振り抜くことで更にダメージを与えることが可能ということだ

「せぇぇぇぇぇぇい!!」

拳が振り抜かれ、空我の体が遥か後方に飛ばされる

すぐさま彼の背中に装着されたムチが高速で回転して勢いを殺そうとするが、完全に勢いが止まった時にはギンガから60m程飛ばされた後だった

「くっ……いってぇ…」

「さっきのお返しよ…さぁ…どう遊んであげましょうか?」

微笑むギンガに空我も立ち上がって拳を向ける

『ピン!』

背中のムチが地を叩き、彼の体がその反動で浮かび上がる

拳の開閉口が開き、それと同時にシェルブリッドの装甲も展開する

連動するように背中のムチは光速で回転を初め、周囲から虹色の光柱が伸びる

「くっ!させるもんですか!」

ギンガは再び高速で動き、空我に迫り、その体に拳を叩き込んだ……だが

「手応えが…おかしい!?」

吹き飛んだ空我は笑っている

空我は自分の前方に防御魔法を貼っていたのだ

そして、殴られたと同時に後ろにわざと飛ばされた

これで拳の威力を多大に落とすことが出来た

そして、それに呆気に取られている間に…彼の拳のエネルギーの準備は完了した

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

回転するムチが彼に空を飛ぶ力を与え、凄まじい勢いで空我はギンガに迫った

呆気にとられていたギンガにはその間に行動を起こすのは不可能だった

完全に拳の射程内…拳を振りかぶり、彼の体が動く

『来る…』

咄嗟にそう判断したギンガが次に見たのは体を回転させて拳ではなくムチを飛ばしてきた空我の攻撃だった

「なっ!?」

思いもよらぬ攻撃に、しかも足下を狙った攻撃に、ギンガは上に飛ぶという選択肢を取って回避した

通常の者ならば直撃だっただろう

だが、ギンガだからこそ避けられた……そう、避けられてしまったのだ

「もらったぁぁぁぁ!!」

それら全ての攻撃が空我のフェイントだと気が付いたのは、自身の眼前にまで彼の拳が迫った時だった

「がっ!」

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……シェルブリッドォォォォォ!!」

主の咆哮にその拳も光輝き、取り込んだエネルギーを爆発させて答えた

「バァァァァァスト!!」

眩い黄金色の光を放った拳は正確にギンガの顔面を捉え、そのまま彼女を遥か後方にまで吹き飛ばした

先程の繰り返しのような状況が続いている

殴ってはとばされ、殴り返しては今度は相手がとばされて…

しかし確実に、だがらこそ確実に、長期戦に突入した場合の敗者は空我と言えた

戦闘機人モードを使っているが故に体力の減りは向こうも通常の倍近く消費しているだろうがやはり元々もの自力が違う

ゆりかご事件を闘い抜いたギンガと、つい最近戦士になりたての空我では根本的に差がある

その差を覆すには圧倒的な力で相手を制圧するしかない

空我もそれがわかっているからそのフルスロットルだ

退路と呼ばれるものはなく、エターナルに変身したところで先程のように魔力供給が出来ない訳では無いがあまりに部が悪すぎる賭けである

空我の魔力の殆どを吸ってしまうエターナルでは倒しきれずに空我の魔力が尽きた場合は敵のサンドバッグになるだろう

だからこそこの拳、この自慢の拳だけが自分の力たり得るものだった

思考しつつも起き上がるギンガから空我は目をそらさない

そらした瞬間殴られるのは自分だと理解している

だからこちらも拳を握りしめる

先程から燻っている己の中の何かにもう少しで火がつきそうな予感がどこからか感じられた

まだ火はつかない

まだそこに手は届かない

なら掴み取る

その力が何なのかはわからないが影は見えたのだ

ならば見えるはずだ

ならば掴めるはずだ

手の甲の開閉口が再び周囲の物質を食らって空我に魔力を供給する

背中のムチが回転を始め、黄金の回転の軌跡を描きながら空我の体が宙に浮く

頭を殴られた衝撃ゆえか、ギンガは睨むように空我を見ながらもまだ立ち上がれてはいない

回復の機会を与えるな……

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

頭の中でそう判断した彼は空間を蹴ってギンガの元へと飛翔する

そして、再びギンガに向かって拳を振り下ろした

「くっ!!」

間一髪、ギンガは後方に飛んでそれを回避した

が、空我はそれを読んでいた…と言うよりは本能的に体が動いたの方が良いだろう

突き刺さった拳を軸に体を回転し、己の背中のムチを強烈に伸ばして360°全てにムチを振った

巻き上がった土煙の中から突然伸びてきたギンガは回避は不可能と判断して受け身の構えをとったがその衝撃に耐えきれず、今度は横に飛ばされた

それをムチから伝わった感覚で察知した空我は土煙を抜け、ギンガを視界にとらえるとすぐさま近付き、光り輝く拳をギンガに食らわせた

だが、ギンガはその拳すら腕を交差させて受け止めたのだ

無論、衝撃を殺すことは出来ずましてや空中だ

何度か床にはバウンドしたが、それすら力に変えて立ち上がった

一方の空我は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる

『決めきれなかった…』

仕留める勢いで振るった拳はどれも不発

流石は戦闘機人と内心賛辞を送りながら再び考える

立ち上がり、呼吸は荒いものの落ち着きは取り戻しているギンガに空我は苦笑いだ

一方のギンガも、空我の成長速度に下を巻いていた

『戦う前なら確実に私が勝つ程の差があったのに……今はその差が急激に埋められてきている。なんという成長速度、なんという伸び代の多さ…』

そして、脳裏に浮かぶ……想い人とその隣に立つ女性の姿…

妹と共に憧れを抱き、愛した人、そしてその愛した人が、最初に愛した人…今まで心に浮かべば憎しみに塗りつぶされていたそんな情景が…そんな思いが…今は自然に溢れ出してきていた

『あぁ…やっぱり弄られてたんだ、頭…そして幸か不幸か空我と戦っているうちにその洗脳が解けた…多分、キッカケは最初に貰った一撃かな…』

思い浮かべるのはほんの少し前の光景

完全に隙をつかれた、いや、こちらの予想を大きく裏切って放たれた…たったひと握りの拳での一撃…

『こいつは……世界から見りゃ小さな一歩かもしれない……
だが!俺達からすればこれは、後の勝利に続くための、大いなる進撃となる!!覚悟しろ!ナイトオブラウンズ!そしてマドラス!!これが……貴様らを撃ち貫く紅蓮の弓矢だ!!』

その一撃に込められていたのは想い…そして願い…それらに彼の中にあった破壊者ではないナニカの力がギンガの洗脳に楔を打ち込む役割を果たした

もちろん、己が喋った記憶は全て覚えているし、した事も分かっている

頭を下げても泣いても許されるものではないだろう

だから、自分はこの子の壁になろう

この子が超えていく壁に、進むための壁になろう

そう思った矢先だった

「クリムゾンスラッシュ!!」

どこか聞き覚えのある声と共に振るわれた斬撃が空我を真横に吹き飛ばした

そして、空我が先程まで立っていた場所には一人の少年が立っていた

茶髪の髪に白い衣服、そして手に持つ漆黒の剣そのアンバランスな配色の人間をギンガは知っていた

何故ここに…そんな疑問が頭に浮かんだ

「足止めをしておいてくれてありがとうナイト・オブ・テン…おかげでこちらから探す手間が省けたよ」

そう言って微笑む少年にギンガは何も答えられない

最悪のタイミングだ…

ギンガがそう思った瞬間、吹き飛ばされた先から空我が自慢の拳を振り上げて彼に殴りかかった

『ガイン!!』

その少年の剣と空我の拳が激突する

空我は全力で振り下ろした拳なのに、受け止めた剣の持ち主は涼しい表情こそしないもののまだ余裕を感じさせた

「誰だ…お前は!」

そう言う空我の瞳から感じるのは戸惑い…本当に知らない人物なのだろう

一方の少年の目に浮かぶのは怒り…まるで待ち望んだ仇敵に会えた時のような喜びも感じされながらも、感じさせるのは怒りの業火だ

「誰……か…俺はよく知ってるぞ大道空我……俺の大切な人を奪ったお前の名前を……我が父に歯向かう愚か者のお前を!!」

少年はそう言って剣を振るい、空我は勢いに任せて後ろに飛び、着地する

ギンガは動けかなかった…いや、下手に動けばその後に何が起こるか考えられたものではなかった

「大切な人を奪った?我が父?何を言って……」

戸惑う空我に少年は勢いよく口を開いた

「リリィを誘拐したのはお前だろう!!そして、我が父、マドラスの夢を邪魔しているのもお前達じゃないか!!」

その言葉に、空我は驚愕する

父?マドラスが?と言うよりマドラスの子供だと?そんな馬鹿な…

彼の脳裏に浮かんだのはそんな言葉だった

「正確な血の繋がりはない!だが、幼い俺とリリィを救い、ここまで育ててくれたんだ!実の子のようにな!」

空我に己の剣を突き立てた

「俺の名はトーマ!貴様の父親、大道連夜を倒した…皇帝マドラスの息子だ!!」

「そんな…バカな……」

冗談だと言ってくれ…そんな思いでギンガを見るが、ギンガはそれに気がついて首を横に振った

「事実よ空我……その子はマドラスが息子として本当に育てていた…私達ラウンズは彼の教導役も務めていたのよ」

「ギンガさん……と言うか今、マドラスって…」

驚く空我に、ギンガは笑顔を見せた

「えぇ…貴方のおかげで正気に戻ったわ…信じられないならそれでも構わないけど、お礼は言わせてもらうわ。ありがとう空我。さすが連夜さんとなのはさんの子供ね」

その言葉に空我は喜びを隠しきれなかった

だが、そんな事に意識を向けている場合ではなかったのだ

「よそ見をしている場合か!!」

振り上げた剣が視界をかすめる

空我が咄嗟に拳で防御しようとした瞬間、彼の自慢の拳は根元から断ち切られた

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」

獣のような声を上げて空我は痛みを感じた

切り飛ばされた腕は彼の背後に突き刺さった

「自慢の武器は無くなったな…答えろ…リリィは何処だ?」

再びトーマによってその剣の切っ先を向けられた空我は答えられなかった

痛みによって思考がうまく回らない事もそうだが、何よりあのスカリエッティの場所から転移した時からリリィがどこに転移されたのかは分からない

ここではないならシャロン姉さんか若狭姉さんの所だろうとは思ったが、それを素直に言えるはずもない

彼女は仲間だ…この少年は自分の大切な人だと言っていたしリリィも自分の大事な人に会いたいと言ってたからこの人物がその人物な可能性は限りなく高いがそれでもイコールじゃない

それに何より、彼はマドラスの息子と言った

リリィは、彼女はマドラスに幽閉され、奴から逃げるために頼られた空我としては絶対言えない理由でもあった

よって、空我が出した答えは徹底抗戦の構えだった

ニヤリと笑い、己の犬歯を見せる

笑顔とは相手を安心させるために行われる行為である共に、相手を威嚇するために行われることもある

空我が意図したのは確実に後者だ

しかもトーマは、自分の武器である拳が切り落とされたことで空我は丸腰であると油断している

そこが致命的なミスであると気付かなかった

「うらぁ!!」

一瞬によって行われた背後に刺さる己の拳の分解、そして再び己の拳に生えるように再構成された自慢の拳

その時間わずか1秒!

上位ラウンズやマドラスなどの敵なら反応されただろうがトーマは反応出来なかったので、もろに腹部に空我の拳をくらった

「ごはっ!」

吹き飛ぶトーマとゆっくりと立ち上がる空我

正確に入った拳はトーマの体に確かなダメージを与えた

「……」

「………」

様々な感情を含んだ瞳でお互いがお互いを見ていた

※※※※※※

そんな状況を、別の場所から見ていた男は不服そうに舌打ちをした

「チッ!!まさかトーマ様がこんな所に来るなんざ完全に予想外だぜ…。誰かが今回の作戦を伝えた可能性がある…か…。
スバルやティアナの野郎の洗脳も解けたし、ギンガの奴は自力で解除してしまいやがった…」

この男こそ、空我達の強襲作戦を意図的に転移先を弄ることで彼等の戦力を分散させ、更にティアナやスバル、ギンガにクロノの洗脳を行った人物、ナイトオブフォーのベリアルである

「今のまま行けばトーマ様が負けるなんてことはないだろうが、ギンガの奴が加勢すれば戦況は一気にあいつら寄りに傾いちまう、それに……」

そう言ってベリアルは別の二つのモニターを見る

そこには戦いを終わらせたシャロン達や若狭達が映っていた

「どれほど寄せ集まろうと羽虫ほどの力しか無かった奴等がこの短期間で急成長を遂げた…。この戦いも、あの空我とかいうガキが更に成長して万が一にでもトーマ様が負けるような事があれば…」

裏で自分がこの戦いを操作したのは自身の主であるマドラスも知っている事で、トーマの件は完全に予想外だがそんな事になったらと…自分に降りかかる危険に恐怖を抱いた彼は残していた札を切ることにした

※※※※※※

「ん!?」

「なに!?」

「転移…反応?」

ギンガがそういった直後、トーマと空我、二人の間に一人の女性が転移してきた

その女性は意識を失っていたが、現れた女性を見て両者が、特にトーマが驚いていた

「リリィ!!」

慌てて駆け寄るトーマ

そう、彼女は空我達と同じタイミングで転移したにも関わらず、ベリアルによって転移空間の中に閉じ込められ、最悪空我達の人質に、上手く行けばマドラスやトーマに取り入る材料にしようと考えていたのだ

しかし、今の状況で戦いを辞めさせるにはこの拘束しているリリィを使うしかないと判断し、転移先を指定して今のこの場所に転移させたのだ

「リリィ!リリィ!」

必死に声を掛け、揺する彼の声にリリィはゆっくりと意識を取り戻した

「……トー……マ?」

徐々に瞳を開けた先に居た会いたかった人物の登場にリリィは驚き、そして大きな嬉しさの波が彼女を包むはずだった…

『ほう……リリィを見つけたのか…』

その心から底冷えするような恐怖の声がその場に響かなければ…

※※※※※※

トーマside

あの人の声が聞こえた

俺が一番尊敬する人で、俺の父親の声が

「ほう…本当に見つけたようだな…トーマ」

マドラス……父上は嬉しそうに俺の前に現れた

俺はリリィを取り返した嬉しさと、そして、自分が最初に見つけた事から彼女を助けてもらえると信じて抱き締めた彼女を父上に見せた

「はい父上、ほらリリィ、ちゃんと立たなきゃ」

リリィ、どうしてそんな怖い顔をしているんだ?

僕には分からない

「マ……マドラス様、この度は…御迷惑をお掛けしました」

少し震えながらリリィが頭を下げた

父上はとても嬉しそうな顔を見せた

「父上、リリィは僕が見つけました。そしてこの手で取り戻しました。これで、リリィに掛かっていた命令は解いてもらえますね?」

俺のその言葉に父上は更に笑みを浮かべて俺の頭を撫でてくれた

「あぁ、もちろん。俺とお前の約束だったからな」


「などと言うと思ったか?」

父上がそう言った直後、俺の隣で何か鈍い音が響いた

その音をなんだろうと思って隣を見たとき、その光景が直ぐには信じられなかった…

リリィが、父上の召喚した光の矢にその腹部を貫かれていた

「ゴフッ…」

リリィが目を見開いて口から血を吐いた

なぜ!!そう言うとして父上の方を向けば父上は俺に見せたことがないような冷たい表情をしていた

「裏切り者を生かしておくはずがなかろう…良くやったなトーマ」

その言葉を聞いた瞬間に理解した

父上は、マドラスは俺を裏切ったのだと

「うっ……」

光の矢が消え、リリィはフラフラと揺れながら床に倒れた

その姿を見た時、そして頭がマドラスは最初から俺を裏切るつもりだったのだと理解した時……体の奥から闇が溢れだした




信じていた者からの裏切り…そして絶望…それはトーマの中でマドラスが育てていた闇が目を覚ますトリガーとなる

そして、空我もまた怒りと悲しみから新たな力を発現させる

次回、魔法戦士リリカルなのは the next 〜永遠の名を継いだもの〜

激闘!円卓の十二騎士編 第護話 怒りの拳