外伝 英雄の地獄

外伝 英雄の地獄


永遠の時…無の空間

誰もいない、自分ひとりの孤独…そんな孤独と一人戦っている…男の話


これは…大道連夜がマドラスの精製した無の空間と呼ばれる空間に幽閉された時の物語である………

※※※※※※

連夜side

無の空間、奴がそう呼んだということは文字通り無の空間なのだろう

俺の思考がすぐさま何も無い『無の空間』の意味をこれでもかと推測した

考えうる最悪の可能性、文字通りの無の空間ならば…そう思った俺の行動は早かった

固有結界の詠唱には時間が無い、だから残りカスの魔力を振り絞り、エターナルのメモリをドライバーにセットして変身

その後にレジェンドのメモリを召喚し、選んだ力は時を止める『スタンド・バイ・ミー』

幽波紋と書いてスタンドと読むその異能者の力で時を止めた

『ピタッ…』

まさしく時が止まる

まさしく間一髪

あと1秒でも遅ければ吸い込まれていた

そんな状態だ

時が止まっているというのにあの穴は俺を吸い込もうと動いている

手の先、指の先でも入っていたらもう時を止めても無駄だっただろう

「いかん……そうそう長く止めていられる訳では無いんだ」

俺が呼び出した幽波紋、世界の意味を持つ『The・world』はじっとコチラを見ながら開いた右手の指を1本中に折り曲げた

開いている指は残り4本…つまりあと4秒

オールメモリはそれだけで莫大な魔力を消費するから却下、その代案としてすぐさま自分の直径3mの範囲に微弱に結界を展開した

と同時に、The・worldの時間停止能力が消える

そして、俺の体はすぐさま無の空間の入口に飲み込まれた

そこで見たものは、本当に何も無い空間だった

レーダーの力で周囲の環境を探索したが、そこには大気が存在しておらず、そして生命体の直感として感じたのだが、そこには時間の概念が存在していなかった

「やっぱりな…無の空間、そこには文字通り何も無い、大気が無い以上、生命体は生きられない…結界を張っておいて正解だ…でなきゃ即死だったな…」

冷や汗を流した連夜だが、とにかく現状即死は無くなった

だが、消費していく魔力に対して供給が間に合っていない

クロに1度全ての魔力を讓渡し、固有結界の中にあった膨大な魔力も殆どをマドラスを消し去る為に使ってしまった

全体の1割程しか残っていない俺にとって、この結界が維持しきれなくなった瞬間=自分の死に直結しているのだ

「………色々考えたが…これしかないか…」

本当に色々考えた…だが、この空間で生き残り、尚且つ我が子達を助けるにはこれしかない

時の概念が無いせいで経過するものが無いから魔力も一向に回復しない

「こいつは……賭けだな」

しかし……かのキョウスケ・ナンブも言っていた

「分の悪い賭けは……嫌いじゃない!」

俺は再びレジェンドのメモリを召喚し、そして一緒にビーストのメモリとエクストリームも召喚した

「この絶望的状況から超克するために俺に力を貸せ!エクストリーム・レジェンド・ビーストチェンジ!創造神アルセウス!!」

俺の言葉と共にメモリが光り輝き、体の形が変わっていく

そして、その俺の変化と共に展開していた結界が消滅した

…………

『生きて………いる?』

一瞬目を閉じていた俺は辺りを見渡しそして己の体を見る

無の空間…そう呼ばれたその空間の中に君臨する純白の体に金のライン、創造神アルセウスの姿で俺は生きていた

『ふう……何もないところから産まれた…って言うゲーム設定に賭けて変身したが、何とかなったか』

発声器官が無いためにテレパシーのような形で俺はため息をついた

この姿になったことで17枚のプレートの力を行使出来るようになり、そのプレートから力を取り込むことで魔力も幾分か回復することが出来た

『まぁしかし…これにだけは……なりたくはなかったんだがな…』

声を落とす…このアルセウスは超常の存在故にレジェンドとビースト、更にその両方のメモリの力を限界突破させるエクストリームの力を借りなければ変身は出来ない

だが、それに付随する形で人間の概念を超えてしまうのだ

今までも確かに人間離れした能力や手段を使っては来たが、それらに肉体が影響があるものは無かった

しかし、このアルセウスは違う…まさしく究極の力故に、一度変身すれば人間という枠組みからは外れてしまう

人の姿をした化物になるという事だ…

『だがそれでも……そうしてでも…俺は生き残る必要があったんだ…』

心の中で流れた涙に別れを告げ、俺はアルセウスの力を行使した

『産まれいでよ我が眷属!そしてこの空間を広げよ!この空間に時間の概念を与えよ!それら二体の眷属を沈める力を最後の一体に与えよ!』

俺の体が、アルセウスの体が光り輝く

そして産まれる三つの卵

そしてそこから産まれた三体の眷属

その力は強大であり、無の空間が広がった

時間という概念が産まれた

そしてそれらの力を管制するように最後の一体が鎮座した

時の神、ディアルガ

空間の神、パルキア

そしてそれら二体の均衡が崩れた場合の調整者、ギラティナ

三体は雄叫びを上げて己の職務を遂行した

無の空間は既に無の空間ではなくなっていた

その空間には時間が存在し、四体の生命体が存在していた

『無の概念が崩れた今、大気を想像しよう!』

そしてアルセウスの創造の力でこの空間に大気を生み出した

そして、生まれていく

大地が、花が、木々が、生まれていく

そして、その大地には海が生まれ、川が生まれ、そして大地という線引きによって空が生まれ、その空には太陽が生まれた

生命は生み出さなかった

最終的に自分がこの空間から完全にいなくなっときにこの自然が崩壊した時に滅びを与えるのが心苦しかったからだ

三体の眷属達はその光景に歓喜の声を上げ、そして何処かに飛び去っていた

パルキアが何処まで空間を広げたのかは分からないが、これ以上は広げないように指示をしておいたので、問題ないだろう

俺は人間の姿に戻り、その生まれたての大地に降り立った

「……人間…じゃなくなっちまったのか」

実感は無い…だが、直感的なナニカ…それが自分が人間という枠組みから外れたのだと理解させてしまった

肺いっぱいに酸素を取り込むために深呼吸をする

体に新鮮な酸素が行き渡る感覚がある

とにかく、今はそれに喜びを感じておくことにした

「しかし、動物という生命体が存在しない以上、この木々も待っているのは死滅だ…そして太陽があっても光合成が起こらなければ酸素は供給されない………仕方がない…か」

エターナルの姿でため息をついた俺はまだマキシマムスロットに刺さっているレジェンドの力で再びスタンドを召喚した

「黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス)…お前の力に頼るとしようか」

召喚したゴールド・エクスペリエンスを自分と対面させる

そして、俺の意思を実行するゴールド・エクスペリエンスは俺の思った通りにその行動を実行してくれた

『無駄ァ!』

ゴールド・エクスペリエンスの声と共に俺の体に激痛が走る

そして、俺の右腕がその一撃によって吹き飛び、そして吹き飛んだ俺の右腕は小さなリスの姿に変化した

「ぐふ……ってぇ……ちくしょう…やっぱり人間じゃなくなっても痛覚はあるのかよ…」

正確に言えば、この時の俺は痛覚の切り方を意識的に考えなかっただけだ

多分だが…痛覚を消そうと思えば消せたんだと思う…だが、心のどこかでまだ人間であるという思いを捨てきれない自分が居たから…この発想に至らなかったんだろう

「ハァ…ハァ……次だ!ゴールド・エクスペリエンス!!」

『無駄ァ!』

次にゴールド・エクスペリエンスが殴り抜いたのは俺の左足、正確で強力な力で俺の足を切り落としたゴールド・エクスペリエンスはその力で俺の左足を今度は美しい鳥の姿に変えた

「ぐっ……くそ……がはっ!」

当然、左右別々にしたとはいえ片足と片腕が無いのだ

バランスが崩れ、地面に倒れた

「ぐっ……がっ……くそ……」

そして感じる痛みに、自分はまだ生きているんだという何処か狂った感情を抱きながら、生み出した2体の生命体と俺の魔力のラインを繋ぎ、俺の指示に従う下僕を生み出した

2体には指示を下す

適度に木々の繁殖を手伝い、適度に滅びを与えよ…と

己の役目を理解した2体は空と地上に分かれてその場を去っていった

残された俺はまるで芋虫のような体勢で変身を解き、そして魔力の回復と己の体の自己再生を促して、5年の眠りについた…

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そして…眠りから覚めた5年後から更に5年の月日が流れこの空間を一時的にだが脱出する方法を掴んでいた

「膨大な魔力をぶつけて空間を歪め、その歪みの中に飛び込んでゾーンの力を使う…か…」

この空間から出ようとすると必ず現れる拘束の鎖の性質とその特性を調べ、そして自分なりにその突破法を研究した結果だ

それでもその空間から出られるのは約5分

自分の全魔力をエターナルメモリに貯蔵し、その上でまた自分の魔力がフルで回復するまで待つ

それに含めて研究や修行をしていたら10年だ…

「だが…時間は間違えない…あの時…この無の空間に吸い込まれようとした時にエターナルの力が弱まった事で思い出さた記憶…今日この日、空我となのはが復活したマドラスに襲われる……その邪魔をさせてもらうぜ」

不敵に笑い、そして俺自身の魔力によって練り上げられた巨大な収束魔法の準備は万端だった

「さぁ……穿て…滅びと再世よ……」

手のひらに乗せ、その力を極限まで濃縮する…手加減などするな、大地が震えようがなんだろうが構うものか

「待ってろ…なのは…空我……今行くぞ!!アポカリュプス・ブレイカーー!」

自分の魔力の全てを込めた必殺の一撃は正確にその空間に風穴を開けた

そして、俺はエターナルに変身して全快した魔力をフルに使い、その風穴に飛び込んだ

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そして…俺はマドラスとの戦いを終え…再びこの空間に帰ってきた

「……スッカラカンだ…魔力も、体力も…」

大地に横たわり、そう呟いた

誰が聞いているわけでもない…この世界に居るのは俺だけだ

「なのはのヤツ…大人っぽくなっていたな…綺麗になってた…そして、空我のヤツ誰だよみたいな顔してたな…まったく、実の父親に失礼な奴だ…」

笑ってるのに、心は笑えない…安堵した…元気そうで

心配した…これから先に待ち受ける未来を

後悔した…こんな空間に囚われてしまったことに

でもなにより……辛かった

もう二度と会えないかもしれない……種は撒いてある…それが上手く芽吹くかは…はっきり言って分からない

戻れる確率は…99.の後ろに永遠に9が並ぶことになるだろう

0やマイナスじゃあない…でも……

「ちくしょう………ちくしょう…」

暫くは、この目から溢れるもんを止めれそうにない…

side out

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あれから、連夜は完全に外の世界に自力で出る手段は失われた

だが、それでも彼は希望を捨てなかった

その為に己を鍛えた、そして、この空間の大気に己の魔力を溶け込ませる事も行っていた

だが、常時膨大な魔力を大気に向けて放出し続ける必要があるため、連夜は自身の体を操作し、意図的に加齢させ、老いさせた

そうすることで肉体が使う力を極限までカットしたのだ

修行する際に魔力を取り込み、若く戻ったとしても実年齢までは戻さなかった

そんな生活を続けて10数年…己の拠点から出て、適度に修行しようと外に出た時だった

「……転位反応だと?」

そして、連夜は出会うのだ

後にトーマ・アヴェニールとリリィ・シュトロゼックと名乗ることになる2人の男女と…

英雄が再び現世に舞い戻る時は……少しずつ近付いていた




聖王教会が掴んだ魔獣達の拠点、そこに向かったヴィヴィオを待っていたのは、人の意思を持ちながら魔獣の姿にされて操られる人々
そしてそれを従えるクロノだった

次回、魔法戦士リリカルなのは the next 〜永遠の名を継いだもの〜

激闘!円卓の十二騎士編 第奈々話
拳と躊躇いと帰還…